第12章 scene3:診察室
松本さんが腰を揺らしながら、ゆっくりと僕に覆い被さって来て…
「ん…、ふっ…、ん…」
呼吸さえままならない僕の口に、松本さんの個性的な匂いを含んだ大量の空気と、松本さんの濃厚な甘さを含んだ唾液が流し込まれた。
凄…い…
元々キスは好きだけど…、松本さんのキスは、今まで交わした誰のキスよりも格別で…
ああ…HIME、キスだけでイケちゃいそうよ…?
あ。でもちょっと待って?
唾液には当然DNAが含まれてる…わけで…
んでもって、松本さんと櫻井くんは従兄弟同士…なわけで…
…ってことは、松本さんのDNAが僕の中に流れ込んで来た訳だから、僕と櫻井くんは松本さんを通じて、DNAで繋がった…ってことにならない?
僕達…赤の他人さんじゃなくなるってことよね?
もしそれがホントなら…僕、超…超超超嬉しいんだけと♡
僕はお口の中を舐め回す松本さんの舌に自分の舌をきつく絡め、そこに纏う液体を全て絞り摂るかのように吸った。
ああ…、僕の中に、ちょっぴり薄まった櫻井くんのDNAが流れ込んで来るよ…
なんて幸せなんだろう…
僕は松本さんと唇と唇を重ね、舌と舌を絡めながら、視線を松岡監督さんが担ぐカメラの向こう…、スタジオの片隅にいる櫻井くんに向けた。
ねぇ、櫻井くんは僕が今何を考えてるか、分かる?
僕ね、松本さんに抱かれながら、頭の中では櫻井くんに抱かれてるんだよ?
櫻井くんは知らないかもしれないし、なんなら僕だってついさっきまで確信が持てなかったけど…
どうやら僕…、かなり櫻井くんのこと好きみたいよ?
ただ残念なことに、この気持ちを櫻井くんに伝えることは…
出来そうもないけど。
だって櫻井くんが好きなのは、“HIME”だもん。
“僕”じゃないから…
その証拠に、HIMEの淫らな姿を目の当たりにして、お股大きくしちゃってるしね?
櫻井くんは“こっそり”のつもりでも、物陰でニギニギしてるの…僕ちゃんと知ってるんだから…