第11章 scene3:病院
袋の中を覗き込んだまま固まる僕…
きっとすっごく硬い石で造られたお地蔵さんみたくなってたと思う。
なのに長瀬さんたら、
「ああ、そう言えば…、現場入る前に挿れといて欲しいとも言ってたらしいが…」
硬い石をも砕く様な一言を僕に投げかけてくるから、僕は足元からガラガラと崩れそうになるのを感じて…
「え、えっと…、現場入る前ってこと…は…?」
「まあ…、“今”しかないだろうな…」
そ、そんなぁ…
「あ、で、でも前室とか…」
うん、そうだよ…、大抵の撮影現場では、出演者用に控え室が準備されてるもん。
だからきっと…
「ない」
…って、そんな身も蓋もない言い方しなくても良いのに…
「はあ…、分かったよ…」
僕はいつもの様に、運転席と後部座席を仕切るカーテンを閉め、メイクが崩れないように、慎重に着ていた服を全て脱ぐと、袋の中身をシートの上に出した。
新品なのは救いだけど、こんなの挿したままで、僕まともに歩けんのかな…
はあ…、不安しかないよ…
とは言え、それが僕のお仕事でもあるし、仕方ないか…
僕はパッケージを開け、中に入っていた“ソレ”を手に取った。
こうして手に握ってみると、思ってたよりうんと大きく感じるけど…
こんなの挿るのかな…
いや、挿るとは思うよ?
だって、NINOの“立派過ぎる子”も挿ったし、もっと太くて長いのだって挿したことあるからさ…
でもそれは、十分に解して貰ってからだし、僕自身の受け入れ態勢だってちゃんと出来てたからであって、こんな何の準備もないまま…、なんてことは初めてかもしれない。
あ、そうだ…
「ねぇ、ローションとか持ってない?」
僕は運転席と後部座席とを遮るカーテンを開け、イヤホンを耳に、音楽を聞き入っている長瀬さんの肩を叩いた。