第10章 日常4:彼のベッド
櫻井くんにお布団をかけ、櫻井くんを起こさないように、そっとベッドに潜り込む。
僕と櫻井くんの間には、HIMEの等身大抱き枕がしっかり邪魔をしているけど、セミダブルのベッドではそんなに窮屈に感じない。
勿論、HIMEの等身大抱き枕が無ければ…って思わないわけでもないけどね?
いくら“僕”のもう一つの姿であっても、所詮抱き枕だし…、出来ればHIMEじゃなくて“僕”を…ってさ、やっぱり思っちゃうんだよな…
欲張り過ぎって思うよ?
ただの“友達”で、ましてやこれから“恋人”に発展する可能性だって極めて低い櫻井くんと、間に邪魔物はあっても一つお布団で眠れるなら、それだけで満足しなきゃってね?
でもさ、ちょっとだけ期待しちゃうこの“HIME心”…分かって欲しいな…
僕は一つ大きな欠伸をすると、HIMEの等身大抱き枕に回った櫻井くんの手に、そっと自分の手を重ねた。
おやすみ、櫻井くん。
絶対に届く筈の言葉を心の中で櫻井くんにかけて、僕は思い出したように重くなった瞼をピターッと閉じた。
そして迎えた初めての朝。←かなり語弊ありかも(笑)
窓から射し込む朝日と、窓辺に群がる小鳥の囀りに、僕は目を覚ます…筈だったんだけどな…
所詮夢は夢…
そう簡単に現実になるわけないよね…
僕は、怒声とも雄叫びとも区別のつかない、
「ぬぉぉぉっ、何でっ!」
櫻井くんの叫びで瞼を持ち上げた。
ぼんやりとした視界に、あんぐりと口を開けた櫻井くんの顔が飛び込んで来る。
僕はまだハッキリとはしない頭で、
「おはよ…」
とだけ言うと、櫻井くんの顔に手を伸ばした。
うん、寝ぼけてたんだと思う。
ってゆーか、そう思いたい!
だっていくら寝起きとは言え、櫻井くんに………しちゃうなんて…
ダメ…じゃん?