第9章 日常3:彼の部屋
って思ったけど、前言撤回!
普通さ、プリンも三つあったら、一つくらい僕にもくれたって良いじゃない?
なのに櫻井くんたら、二つ目のプリンをペロッと平らげると、三つ目のプリンの蓋をペロンと捲った。
そして櫻井くんの手には小さ過ぎるスプーンでプリンを掬うと、
「んまい♪」
幸せそうなに顔を綻ばせて、頬を両手で挟んだ。
僕だってプリン好きなのにな…
櫻井くんてば、HIMEのファンだって言ってるくせに、HIMEがスイーツ好きだってしらないの?
…って言いたいところだけど、今の僕は“HIME”じゃないし…
は〜あ…、帰りにプリン買って帰ろっと…
僕はよいしょと掛け声をかけながら立ち上がると、
「じゃあ僕そろそろ行くね?」
無心でプリンを頬張る櫻井くんに言った。
すると、櫻井くんは僕の手首をガシッと掴んで…
「口…」
へ?
「口、開けて?」
なんて、熱で潤んだ目で僕を見るから、僕も逆らえなくて…
「こ、こう…?」
戸惑いながらも、櫻井くんに向かって口を開けて見せた。
そして、
「ほら、食いたかったんでしょ?」
櫻井くんの声と一緒に、僕の口の中にプリンの甘い匂いと味が広がった。
「んふ、おいひぃ♡」
「だろ? もう一口食う?」
「うん♡」
満面の笑みで頷き、“あ〜ん”と開けた僕の口に、今度はプリンの甘さだけじゃなく、カラメルのほろ苦さも広がる。
「ん〜、この甘さと苦さのコラボが堪んない♡」
「だよな(笑)」
「うん♪」
一瞬でも櫻井くんのこと“意地悪な人”って思ったこと、ちょっと申し訳なかったかも…
櫻井くん、本当は全部自分で食べたかったろうに、僕にプリン分けてくれたし…
なんか…ごめんね?♡