第9章 日常3:彼の部屋
救急車で運ばれたんじゃなかったら、もしかして寝てるのかもしれない。
だとしたら無理に起こすの申し訳ないし、櫻井くんのためにって買って来た物は、無駄になっちゃうけど、僕が片付ければ済むことだし…
やっぱりこのまま帰ろう。
僕はインターホンを鳴らすことなく、自転車のサドルに跨った。
そして、ペダルに足をかけた丁度その時、コートのポケットの中で、僕のスマホが能天気な音を鳴らした。
普段の僕なら、多分気にすることなく自転車を走らせていた。
でも続けて二度三度と鳴る能天気な音が気になって…
僕は自転車に跨ったままでスマホを取り出と、能天気の原因となったメッセージアプリを立ち上げた。
「えっ…?」
どゆこと?
僕はアプリを立ち上げるなり、頭の上に無数の?マークを浮かべた。
だって僕の(想像だけど…)中では、櫻井くんは病院に緊急搬送されてるか、寝てるかのどっちかだったから、まさか櫻井くんからメッセージが届くなんて、全く思ってもなかったんだもん…。
だから一瞬本当に櫻井くんからなのか疑ってしまって…
『本物?』
なんて、またしてもトンチンカンなメッセージを送ってしまう。
勿論、咄嗟に『大丈夫?』って送り直したけど、もう遅くて…
“怒り”の文字と一緒に、HIMEにそっくりなキャラクターが、頭から火を吹いているスタンプが送られて来て…
僕は自分の間抜けさを、ほんのちょっとだけ呪った。
でもその直後…
『嘘だよ〜ん♪ 玄関開いてっから、勝手に入って来て(笑)』
と、HIMEに似たキャラクターがウインクをしているスタンプと一緒に送られて来た。
僕は内心ホッとすると同時に、櫻井くんて人が良く分からなくなった。
だって、どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか、全然分かんないんだもん…