第9章 日常3:彼の部屋
そのままスマホを手に、暫く画面を見つめてみる。
でも一向に“既読”の文字が付くことはなくて…
もしかして寝坊?
時間に正確な櫻井くんだから、絶対にありえないとは思いながらも、ありえない想像をしてしまう僕。
でもふと気がついたんだ…
あ…れ…、このスタンプって…
「うっそ〜ん…」
僕が送ったスタンプは、“HIME”に良く似たキャラクターが、頭から火吹いて怒ってるスタンプで…
しかもその横には、“プンプン”の文字があって…
「え、ちょ…、これ…、どうしよ…う…」
機械音痴(特に電子機器の類が…)の僕は、当然頭がパニック状態に陥り…
そんな時に限って、斗真が僕を呼びに来るしで、僕は仕方なしにスマホをリュックに放り込むと、タイムカードを押してスタッフルームを出た。
櫻井くんに送ったスタンプのことを気にしつつも、軽く挨拶を済ませ、レジカウンターに立つと、斗真が血相を変えて俺に駆け寄って来て…
「悪いんだけどさ、対応頼むわ…」
そう言って逃げるようにスタッフルームに消えて行った。
僕は何が何だか分からないまま、斗真が指差した方に視線を向けると、そこには小太りの男性客を前に、顔を真っ赤にする新人ちゃんの姿があって…
「…ったく、僕はクレーム処理班じゃないっつーの…」
僕は一人ごちりながら、僕はその男性客の元へと歩み寄ると、
「えっと…、何が問題でもありました?」
男性客と新人ちゃんの間に割って入った。
そして極上の営業用スマイルを浮かべ、小首を傾げて見せた。
「き、君か…」
途端に小太りな男性客の顔色が変わる。
そりゃそうだよね?
だってこの客、正真正銘ゲイのおっちゃんだもん(笑)
しかも、僕みたいなタイプが好みのね?