第1章 再会
あの時の私はかなり浮かれていた
初めてのジムチャレンジ
小さい頃から憧れていたあの場所に立てた感動
今でもそれは忘れない。
なんだかんだ苦戦しつつも、七つバッジを集めた私は最後のバッジがあるナックルシティへ行った
そこで彼と初めて、正面から会話をした。
「さてさて、やっときたな。ジムチャレンジャー」
「ようやくここまで来れた……キバナさん、あなたに勝ちます!」
それが初めて交わした言葉だった。
結果は惨敗
私はそれでも挫けず、期間の許す限り何度も挑戦した。
そのうち周りの人からも「お、頑張れ!」とか「打倒キバナだな!」とか声をかけられるようになった。
初めは嬉しい感情もあったし、楽しかった。
何度も挑んでいると、キバナさんも私の名前を覚えてしまったらしく、「また来たな?スズ」とか言い始めていたのをよく覚えている
私はこの時、ああ、ジムチャレンジしてよかった。TVや雑誌で見ていた、好きな彼がこんなにも近くで、私の名前を呼んで、バトルして……幸せだった。
でも、それも終わりが来た
……私がジムチャレンジ3回目を参加した時の話
私はだんだんと耐えることが出来なくなっていた。
いわゆるアンチのことだ。まぁ、それに負けてしまった私も私だけれど。
……一番酷かったのは襲われかけた時のことだった。相棒のウインディのボールが、掴まれた衝撃でカバンから出てこなかったら大変な目に合っていただろう。
……今でもあの時のことを思い出すと怖くてたまらない。
そんなことがあって、3回目の時に「これで負けたらやめる」と決めて挑んだ。
そして翌年からはジムチャレンジからパッタリと姿を消した。
小さくニュースになったが、みんな辞めていく子も少なからずいたので、大した騒ぎにはならなかった
私の顔を見てわかる人はなかなかのジムチャレンジ好きくらいだろう。
………
今はもうジムチャレンジャーでは無くなってしまったのだ。
彼に未練もない。諦めがついた。一ファンとして応援すると。
だからこそ、彼が私に声をかけてきたのが不思議で仕方がなかった
「キバナさん、何がご用でしょうか?」
「………再会の記念に一枚撮ろうぜ」
彼は少し口籠った後、そう言いスマホロトムを出して近づいてきた