第17章 楽園事件:8
「阿頼耶真。あなたを連続傷害事件の首謀者とみなし逮捕します。抵抗せず、大人しく投降しなさい。」
常守が拡声器で警告するが阿頼耶は止まらない。一見、怪我をしているのかと思うほど憔悴した様子だ。
「あぁ……」
阿頼耶は手をついて倒れた。すかさずドローンに周りを囲ませる。宜野座がスタンバトンを片手に近寄る。が、次の瞬間にはドローンの輪から飛び出した。阿頼耶の顔は獣に侵食されかけているように継ぎ接ぎだらけだった。手足は人のものではない。唸り声を上げ、食いしばる歯が次第に鋭くなる。顔が全て毛皮に埋め尽くされた瞬間、骨格も人のものではなくなり、宜野座目掛けて飛びかかった。
「宜野座さん!」
常守の叫びと同時。寸前で接触しそうな阿頼耶にが飛び上がって鉤爪を突き立てた。二匹の獣が地面でもつれ合う。阿頼耶の爪はの目を狙って引っかき続け、羽根がそれを隠すように散っていた。彼女をフォローしたくとも二人が近すぎてできない。
阿頼耶は呻きながらも柔軟な身体を撓らせての背に回った。
「まずい!」
首を噛まれる。宜野座はドミネーターを構えた。常守が後方で叫んでいる。だが集中して彼には届かない。
ドミネーターは大きく変形し手首を固定する。デストロイ・デコンポーザー。エネルギーが集まり出す。完全排除になる一発だ。に当たればただでは済まない。
「!伏せろ!」
は宜野座の叫びに反応し、噛みつかれた首の痛みに耐えてじっと伏せた。凝縮されたエネルギー弾は青白く光りながら向かってくるのが見えた。それが上を通過していく。阿頼耶は寸前で避けた。どこにも当たらずにエネルギー弾は消滅した。威嚇にはなった。阿頼耶はから離れ、宜野座の様子を伺っている。標的を変えたか。閃光弾は一人一つずつしか渡されていない。確実に当てなければいけない。向かってきた瞬間に反応しなければ。
阿頼耶は牙をむき出しにして威嚇する。そして向かってきた。早すぎる。一秒経たずに至近距離まできた。思わず使い慣れたドミネーターを構えてしまうがそれを猫のジャブ一発で体ごと飛ばされる。ドミネーターが手から離れた。一瞬のうちに爆発にでもあったような衝撃に体が動かなくなる。阿頼耶は倒れた宜野座に噛みつこうとした。