第13章 楽園事件:4
彼の憔悴しきった顔は今でも思い出す。あれだけ世話になりながら何も返せなかったことだけは心残りだった。
「が世話になった人ってそのコーガミさんってやつか。」
亮一も初めて聞いた話しだったらしい。常守の顔をちらと見やってからもう一度を見る。
「で?そのコーガミさんとはハグとかチューとかしてたの?」
表情を変えない亮一ととは逆に赤面しだす常守と宜野座。
「お、お前、そんなプライベートな話しは聞かなくても…!」
「そう?こいつはっきり聞かないと通じないしさ、それに朱ちゃんは知りたいかと思って。」
「ぅええ!?私、そんな顔してますか?別にそこまで詮索しないですよ!!」
「じゃあ今の質問は答えなくていいってことね?」
「いや、聞いてしまったからにはこちらも気になるものがあるだろ!」
「なあに?それお姉さんも興味あるわぁ〜」
カウンター側からこちらを向いて座る唐之杜の声も。六合塚は興味ないといった風だが。狡噛の人気ぶりが分かるもののあまり注目されるとさすがのも答えにくそうに肩をすくめていた。
「あった…かな。そういうことも。」
頭から汽笛が出そうな宜野座と真っ赤な常守とそれを面白がる唐之杜。彼女の笑い声だけ大きく響いた。
「へぇ、にもそんなことがあんのか。」
「事故だったけどね。」
「事故!?」
この場の全員が声を揃える。事故とは一体どういうことか。
「酔っ払ってたの。本人も無意識で覚えてなかったらしいし。」
「最低か。」
「狡噛さんがそんな人だとは思いませんでした…」
「まぁお酒の勢いにしたって、やりかったのは本当なんじゃないの?女の子を家に入れて何もなしってのも生殺しよね?宜野座くん。」
「何故俺に聞く!?俺にはよくわからん!」
だが待てよ。過去をよく思い返してみると宜野座は狡噛から当時話しを食堂で聞いた。それはそんな酔った勢いの話しなんかではなかった。が忘れているのか、それとも隠しているのか。狡噛が見栄を張って嘘をつくタイプでもない。分からないが自分が掘り起こしていい話題かどうかも判断がつかなかった。というよりつけたくなかった。