第13章 楽園事件:4
「さん、こっち座って話しましょうよ。宜野座さんも。」
常守がほんのり頬を赤くして二人を呼ぶ。は宜野座に押され常守の隣座らせられ、更に反対隣は宜野座が座り、逃げ道はない。常守は皿にアラカルトを持って差し出す。
「これ、美味しいですよ。」
は仕方なく手にとって口に運ぶ。しかし麦の加工品と思うと美味しいかどうか分からない。前からだ。
「は味音痴だから美味いも不味いも理解できないぞ。」
亮一は皿を持って常守との間に無理やり入ってきた。
常守は彼の分、場所を空ける。その図々しさを宜野座は怪訝な顔で見ていた。
「なんでわざわざ狭いところに入るの?」
、よくぞ聞いたと宜野座は思う。
「俺だって女の子の隣座ってみたいんだよ。」
「へぇ、リョウもそんなこと思うんだ。」
「二人はいつも一緒ってわけじゃないの?」
常守はとくに気にせずオリーブをつまむ。
亮一はパスタを食べながら答える。
「大体一緒。でもこいつは別。女とかそんなの思わないし次元が違うっていうか。」
よくもまぁ本人の前ではっきり言えるなと思ったがは相変わらず表情が変わらない。その関係性に納得がいっている様子でもある。
「良い友達なんだね。」
「友達かぁ。なんか違うな…家族に近いのかな?」
亮一は口をもぐもぐ動かしながらを見る。彼女はやはり無表情を崩さない。
「他に怪物は阿頼耶ぬかしてコイツだけだし。」
とても信頼し合っているのはよく分かる。だが逆に言えば彼らには互いの存在しか認め合えるものがいない。それが良いのか悪いのかは分からない。
がほんの少し口端を上げたように見えた。
「私はあんたのこと弟みたいって思ってるよ。」
「へぇ、嬉しいね。初めて聞いた。」
ただこの二人のやりとりは見ていて温かいものがあると常守は思っていた。亮一の見ていないところではちゃんと目を向けて見守っている。
「も食えよ。ガリガリなんだから。」
「リョウが食べ終わってからでいい。」
変わらずガツガツと食べ続ける亮一と、それを静かに見守る。二人には男女という位前に体格差が激しい。彼の言うとおりはかなり痩せていた。