• テキストサイズ

BERKUT【PSYCHO-PASS】

第13章 楽園事件:4


刑事部屋は一係の殆どが揃っているのに静かだ。あの後、阿頼耶を見失い、全員引き上げた。霜月監視官は着任して浅いのにこんな非現実的事件に振り回され色相が少し濁ったようだ。今はメンタルケアに集中していてこの部屋にはいない。傷だらけの狼、リョウは医療用ドローンの応急処置を受けたあとこっそり公安局に運ばれて唐之杜の治療を受けている。大きなソファに膝を抱えて小さくなっているは服を支給してもらった。姿が変われば直ぐに壊れるからいらないと言ったのだがコートをずっと貸すわけにもいかないので宜野座に強く勧められた。
の向かいに座る常守は手足に包帯が巻かれている。爆発で吹き飛んだ時の擦り傷だ。火傷のようになった傷口がズキズキと痛む。
常守のデバイスがなった。唐之杜からだ。

「治療、終わったわよ。と言っても殆ど自分で回復しちゃったけど。」

化身は細胞の高速再生の際に変化をもたらすもの。傷を治すのも早いものだった。

「ありがとうございます、唐之杜さん。今そちらに向かいます。」

通信を切り、を見ると目があった。

「行きましょう。」

常守が声をかけるとは無言で立ちあがった。
医務室の前にはわけも分からず追い出された職員が数名、立ち往生していた。運び入れたときはまだ狼の姿だった。イレギュラーな患者を見て色相を悪化させるわけにもいかず唐之杜が追い出したのだろう。それを割って二人が中に入ると、狼は居なかった。代わりに検査衣姿の男が一人身体を起こしている。

「リョウ…!」

常守の後ろから追い越しては近づいて行った。ベッドの上の彼は包帯を巻かれた首をゆっくり横に動かした。

「、無事か。」

「無事じゃないのはあんただけだよ。」

「阿頼耶があんなに動けるようになってると思わなかったんだ。」

男はの後ろから来る常守を睨むように目をやった。猟犬のそれに似ているがもっと凄みがある。常守はひと呼吸置いてから話した。

「刑事課一係監視官の常守朱です。あなたは…」

「益荒男亮一。見ての通り化物だ。」

彼の声色を聞いて分かったが、睨んでいたわけではなくそういう目つきだった。あまり警戒している素振りはない。そう見せているだけかもしれないが。

「傷の具合はどうですか?」

「もう、治った。」
/ 260ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp