第11章 楽園事件:2
するとはすぐに振り返って常守を見つめた。何を考えているか分からない瞳に困惑する。
「常守さん。佐々山さんの家族?」
「え?」
佐々山という名前は最近の事件でよく耳にした。だがなぜ彼と自分を家族に結びつけるのか常守には分からなかった。
「佐々山さんと同じニオイがする。」
宜野座は吹き出した。常守はなぜ笑うのかと後方の宜野座を振り向く。彼はタバコのジェスチャーをした。でもタバコは狡噛と同じはず。
「佐々山が吸ってたタバコを狡噛が吸い、狡噛がいなくなったら常守監視官が嗜むようになった。」
二人とも佐々山に呪われてると宜野座は笑った。
「狡噛さん、タバコ吸うようになったんですか。」
「佐々山が殉職してな。それが原因でさらに執行官に落ちた。」
「佐々山さんもいないんですか…。和久さんは?」
「和久さんもあのあとすぐ殉職。花表と昏田は行方不明。天利は厚生施設に戻った。ついでに言うと先日征陸執行官も殉職した。」
ついでとは言ったものの最後を口にするのが一番辛そうだった。こうして思い出すと随分様変わりしたものだと宜野座は思う。いつのまにか自分が古株になったのだから。
「危険な仕事なんですね、監視官と執行官って。」
そう言われても仕方のない状況だ。彼女の知らない執行官だってそのあと亡くなっている。
「阿頼耶は頭がいい。十分に気をつけてください。」
はそう言うと一人で廊下を先に行ってしまった。
宜野座と常守も取調室をでて執務室に戻った。
「彼女、一人で行かせてよかったのか?」
「私達と違って歩いて帰ったりしないでしょうから。」
「…そうだな。」