第7章 お兄ちゃんと一緒2【寺光遙日、寺光唯月】
「ゆかり!今日こそ俺のお嫁さんになって〜!!」
「はるにいちゃん!来ないでーっ!!」
わたしはいまはるにいちゃんに追いかけられている。ハーフでアイドル、高身長のイケメンが従兄弟で求婚されているなんて、羨ましがるシチュエーションかもしれない。現にわたしはこの悩みを誰にも相談できていない。
「ゆかり。捕まえた。」
「げっ、ゆづにいちゃん。」
もう1人の従兄弟、ゆづにいちゃんがわたしの手を掴んで自分の胸板にぎゅっと収納した。さりげなく腰から肩甲骨のあたりまでつーっと触られて背中が粟立った。そーゆーとこだよ!
「やっ。ゆづにいちゃん。」
「はあ。今日もゆかりがかわいい……」
いつの間にかはるにいちゃんも近くに来ていて、ニヤリとイタズラな目で笑った。
「今日こそはどっちと結婚するか決めてもらうよ。」
そう。あの日からわたしはふたりのにいちゃんにいろいろな方法で求婚されているのだ。でもわたしはどっちかなんて選べなくて、今日に至る。…いや、はるにいちゃんがベタベタにバラの花束100本持ってきた時は、ゆづにいちゃんと結婚しようかなと思ったし、ゆづにいちゃんが、わたしといい雰囲気の時に、縁側のポカポカ陽気に負けて、眠ってた時は、はるにいちゃんと結婚しようかなと思った。
「今日はどんな方法でわたしを奥さんにするの?」
半ば呆れで聞いてみたら、私を抱きしめていたゆづにいちゃんわたしを担いだ。
「正攻法で。」
「正攻法で女性を担ぐやつがあるかーっ!」
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はるにいちゃんの車で来たのは高級そうなホテルだった。もう嫌な予感しかしない。
「わたし、帰るっ。」
「なんで?今日一日、予定ないでしょ。」
「ないけど、ホテルに行く予定もない!!」
「ゆかり、暴れないで…」
車から降りたがらないわたしに、はるにいちゃんが真剣な顔を近づけてきた。
「いいか、ゆかり。今日が最後だから。」
「へ……?そうなの?」
「そうだよ。ゆかり。だから、少しだけ付き合って。」
「はるにいちゃんと、ゆづにいちゃんが、そこまで言うなら……」
こうしてあほなわたしはまんまと双子の手で踊らされる羽目になったのだった。