第5章 確信犯【殿弥勒】
「んじゃ、おつかれぇ〜い」
うぇ〜い、なんて若者らしい合いの手が飛び交い、ジョッキ片手に乾杯する。
みんなは同じ大学のサークル仲間で、私と数人はOBだ。
私の父が持っている別荘で、BBQをしている。
「てかこの辺まじ涼しくないっすか。」
「一応避暑地だからね。」
「ゆかり先輩、いいな〜。毎年来れますもんね。」
「用事がなければね〜。」
私も酒をあおる。
用事がなければというのは、半分本当で半分嘘だ。
自分の彼氏がいる時は、ここには来ない。
恋人との泊まりを別荘でなんて、容認する父ではないし、私も自分に不利な嘘をついたりしないからだ。
「ゆかり先輩。肉焼けましたよ。」
「ありがとう、弥勒。」
弥勒は今年入った新入生の1人だ。
春に大学の近くの居酒屋でサークル飲みをした時に出会った。
真面目で無口な方だけど、よく気が付くいい子だ。
「肉うまっ。」
「今日は飲むぞ〜!」
みんな好き勝手飲んだり食べたり、どんちゃん騒ぎが始まった。