第2章 正体
ーside アラン
(やべぇな、このままじゃちょっと遅れる)
アランはと別れた後、城への帰り道を急いでいた。
今日はプリンセス選定式。
プリンセスが決まれば、身辺警護で忙しくなる。
その前にに会いたかったのだ。
(……送ってくつもりなんてなかった)
つい別れがたい気持ちに襲われ、時間がないのに遠回りしてしまった。
アランは思い出してため息をつく。
騎士宿舎に寄って手早く着替えを済ませ、城門周辺を一度チェックしてまわった。
すると、城壁を見上げる不審な女がいる。
「何してんだお前……?」
ーー話を聞くと、プリンセス選定式に来たわけではなくただ探したいものがあるから城の中に入れて欲しいということだった。
「プリンセスに興味ねぇのか…変わった奴」
(そういや、あいつも今日は予定ないとか言って。選定式に来るつもりなさそうだったな)
脳裏にさっき別れたばかりのの顔が浮かんだ。
(しょうがねぇな、入れてやるか)
他意はないからな、と思いながら壁から引っ張り上げてアランは女を城の中に入れた。
(ただでさえ遅れてんのに、変な女に構ってる場合じゃない)
足早に建物の中へ入ると、衛兵が「アラン様……!こんな時間までどちらにいらしたのですか……!」と駆け寄ってくる。
「ちょっと遅刻しただけだろ。ジルには黙ってろよ。うるせーからな」
これから始まるであろう慌しい日々を思うと少しうんざりしたが、腰に刺した剣を確かめるように手で撫でて気持ちをひきしめた。
「よし……いくか」
こうしてプリンセス選定式の一日は始まった。