第2章 正体
普段散歩に出られるのは早朝だから、とアランが言うので、約束したわけじゃないのに私もその時間に合わせて出かけるようになった。
会えない日もあるし、会話も別に弾まない。
でもやっぱり会いたくて、その時間を楽しみにしている自分がいた。
そうして数週間が過ぎたある日。
「今日は送る」
アランがそう言い出した。
いつもは途中の分かれ道で、それぞれの岐路につく。
「遠回りなんじゃない?」
私がそう言うと、アランは少し考えて言った。
「これからしばらく忙しくなる。当分来られなくなるからな」
「そ、そっか。じゃあお言葉に甘えて」
落胆した気持ちが声に出ないように、明るく振る舞った。
二人でうちへ向かう道へ足を向けて、ふと気がつく。
(これは、うちに寄ろうとしてる?いやいや、友達と呼べるかどうかのこの関係で家に入れるとかどうなの?でもでもお茶くらい誘わないとダメ?!)
「なぁ、おまえ今日このあとなんもねぇの?」
ぐるぐると考えていると、アランが聞いた。
「え、うん。何もない。仕事は休みだし」
「ふぅん」
なにそれ。
なに今の質問。
期待するよね?今の流れ。
いつもと違うアランの言動に動揺しているうちに、もうすぐ自宅の前だ。
「え、と、じゃあここだから」
「ん」
「送ってくれてありがとう」
「ああ、じゃあな」
え?それだけ?拍子抜けしてしまう。
慌てて聞いてみた。
「また会えるかな?お散歩仲間として」
「仕事が落ち着けば、だな。散歩仲間として」
変な予防線張っちゃった。
嬉しいような、くすぐったいような気持ちでアランの背中を見送った。