第1章 はじまり
うーん、今日もいい天気。
食べ終わった朝食を片づけると、一つ伸びをして愛犬に声をかける。
「よしっ、お散歩いこっか!」
嬉しそうにしっぽを振って走り寄ってきたリンをリードで繋いだ。
靴箱の上に置きっぱなしにしていた1通の封筒をゴミ箱へ落とす。
「せっかくの招待状だけど、行く気全然ないし捨ててもいいよね」
なんで行かないの?とでも言うように不思議そうにこっちを見ているリンに、「だってこういうの興味ないんだもん」と呟いて玄関のドアを開けた。
雲一つない晴天で、すがすがしい風も吹いている。気持ちがよくて少し遠出がしたくなった。
「ね、いつもと違う場所に行ってみようか」
そして私たちは綺麗な湖畔のほとりを歩いていた。
素敵な場所だけど、ちょっと遠いから毎日は来れないんだよなぁ……。と、リードから解放されたリンが駆けていくのを後ろからゆっくりと追っていく。くさむらの影に隠れて見えなくなったなと思った時ワンワン!と鳴き声が聞こえてきた。
「リン?どうしたの?」
小走りに近づいていくともう1匹リンとは違う犬の鳴き声がする。
ほかにもお散歩にきてる子がいるのかな?
覗いてみると、リンと一緒にいたのはキャバリアの子犬で2匹は楽しそうにじゃれあっていた。
「お友達できたの?よかったね」
そう言ってしゃがむと、子犬は人懐っこく寄ってくる。
「君、名前は?飼い主さんはどこにいるのかな」
柔らかな毛をなでながら話しかけていると……
「アーサー!いなくなったと思ったらこんなところに……」
子犬のことをアーサーと呼んだ飼い主と思われるその人は、私に気付くと言葉を止めた。