第13章 Capture!〈遠坂 雪音〉
後ろから駆けてくる音が聞こえる。優一さんが心配して来てくれたのかな。折角楽しい所だったのに、邪魔して本当に申し訳ない…。
「おい」
声をかけられたと思ったら、その声は間違いなく剣城君の声だった。なんで追いかけてくるの。君はお兄さんとサッカーをしていたんでしょ。どうして私の所に来るの。
『離して…下さい…!』
「それは出来ねぇ」
『どうしてですか!』
「…」
少しの沈黙が通り過ぎた。同時に冷たい空気も身体を突き抜けていく。何かを言われる覚悟が私には出来ていない。
「お前をこのままにしてはいけないと思った」
『…』
「なぁ、お前は俺を知ってるのか?」
知ってるも何も、もう一度会うって言ったよ。でも、こんな出会い方は…嫌だった。
『ごめん…なさい!』
何でなんだろう。涙が溢れて来てしまうのは。どうしようもなく辛い事だって気付くのには、時間は掛からなかった。手を振り解いて、雷門へと全力疾走した。
「雪音!」
『天馬君』
「どうしたの?凄い息切れしてるけど…」
『ちょっと気分転換に全力疾走をしてきました。あはは…』
「そっか。あっ、そうだ!時空が不安定だから、もうすぐに行かなきゃいけないんだ。もう大丈夫そう?」
『あ、はい!大丈夫です』
「そっか。じゃあキャラバンに乗り込んで!」
『分かりました!』
今までの事を全て忘れるかの様にキャラバンの入り口のステップを登る。中には既に瑪瑙さんが待機していた。
「雪音ちゃん」
『瑪瑙さん』
「おいで。まだ誰も居ないから」
『…』
「京介君に会った?」
『はい』
「そっか。辛かったね」
きっと瑪瑙さんには、私が泣いていた事が分かってしまっていたのだろう。抑えていた筈なのに、涙がまた止め処なく溢れてくる。
「大丈夫。雪音ちゃんなら、取り戻せるよ」
『はい…』
「皆!時間がない!そろそろタイムジャンプを始めるぞ!」
ワンダバがそう叫び、残った数人でインタラプトを修正に入る。キャラバンを降りると、仲睦まじい兄弟が元気にサッカーをしている。丁度剣城君が外してしまった所でアルファが現れた。
『貴方だけは…貴方達だけは、絶対に許しません…!』
もう、失いたくない。だから、強くなってみせる。絶対に、守るんだ。
「行くよ」
『はい』
私は勿論、序盤から化身アームドで戦うつもりだ。私なら、戦える。絶対取り戻す!