第13章 Capture!〈遠坂 雪音〉
『寵愛の神、ヴィーナス!アームド!』
「雪音ちゃん、大丈夫?最初からそんなに飛ばして…」
『いえ、大丈夫です!』
絶対に負けられない。最後までアームドのまま乗り切ってみせる。
「雪音!」
『はい!』
天馬君からボールを受け取って真っ直ぐゴール前に走った。
「凄い…」
私達と同点のまま前半を終え、ハーフタイムを迎える。一度アームドを解いてドリンクを飲み干した。
「大丈夫?雪音ちゃん」
『瑪瑙さん。大丈夫です』
「そう…」
また直ぐに後半が始まってしまう。今の内にちゃんと回復しないと。
「無理しすぎちゃ駄目だよ」
『はい』
もう一度アームドで対抗する。絶対に負けられない。優一さんに瑪瑙さんに、何より剣城君のためにも。
「決めたっ…!」
ギリギリになって私達が一点を決めて、何とかこの試合に勝利した。合計時間約1時間程ずっとアームドしているとかなり辛い。
「あっ…優一さん…」
『二人とも…』
「最後まで、優一君と一緒に居たかったの。そうだ、優一君」
「ん?」
「これ、雪音ちゃんに託しましょう」
「そうだね」
二人から貰ったのは、タイムブレスレットだった。これを…私に?
「京介の事、よろしくな」
『はい!』
「優一君」
「瑪瑙」
二人とも、笑顔だった。何も悔いがないのか、晴れ晴れとした表情をしている。
「ありがとう」
優一さんの顔を見たら、皆顔を上げられない様だった。そして、優一さんと瑪瑙さんは最後に口付けを交わして…光となった。
『…っ…!』
「戻ろうか」
二人から託されたブレスレットが光を反射して輝いている。私は、あの人達に何か出来たのだろうか。
『ふっ…うぅ…』
「歴史が…元に戻ったんだ」
何をしているのか分からないままキャラバンに乗り込む。駄目だ。こんなんじゃ、駄目なのに。
「時空を移動するよ。掴まっててね」
フェイ君の言葉に頷いて、目を開けた時にはもう、見慣れた風景が視界一杯に広がっていた。
『…』
無言でキャラバンを降りる。何とも言えなくて、そのまま校舎裏に来てしまった。天馬君達には伝えてあるから大丈夫だろう。
『どうして…』
二人から貰ったブレスレットを抱えたまま、唯々泣き崩れた。二人がどうして私にこれをくれたのかよく分からなかったけど、でも絶対に大切にする。
「遠坂」
その時突然に大好きな声が聞こえた。