第11章 Incident!〈遠坂 雪音〉
『大切にしますね!』
「あ、ああ…」
風に吹かれる度に揺れるリボンが可愛くて、絶対無くさない様にしようと思った。
『東京に着く頃には3時頃になりそうですね』
「雷門に来るか?」
『是非!皆さんともう一度サッカーしてみたいです』
「サッカー好きだな」
『皆さんが好きにさせてくれたんです。きっとあのままだったら、サッカーは嫌いになっていたと思うんです』
「そうか…」
『でも、天馬君基雷門の皆、勿論剣城君達のおかげでサッカーを嫌いにならなかったんです。というか好きになれました』
「…」
『あれ、剣城君…?』
寝ちゃってる。1週間も遠い所来てサッカーやってたら緊張しちゃうよね。
『お疲れ様でした。カッコ良かったですよ』
こうやってすやすやと寝息を立てている所はあの小学生の女子達には見られないんだと思うと、少し優越感が湧いた。どうしてなんだろう。こんな気持ちが湧いてしまうのは。
今までこんな気持ち、感じた事なかった。どうして剣城君といると気分が変わった様になってしまうのは…どうしてだろう。
〈雪音ちゃん、戻ってきちゃ駄目だ〉
え…。知らないメールアドレスからきた、たった一文。戻ってきちゃいけないってどういう事…?何かのイタズラ、だよね?でも私のメールアドレスはどうやって…。
〈どういう事ですか〉
取り敢えず返信はしてみるけど、何の反応もない。何か起きてるとか?いやいや…そうだったら少なくとも菖蒲ちゃんから何か来てる筈。
「ん…」
『へっ…?』
剣城君が私の肩に頭を預けてきた。疲れが溜まってるんだろうけど…これじゃ保たないよ…!
『…!』
そう思っていた所で返信が来た。
〈とにかく駄目だ。戻って来ないで〉
〈貴方は…誰なんですか〉
そのまま返信を返す。誰だか分からないと信憑性が無いというか…。まぁ知ってる人じゃ無いと分からないかもしれないけど。
〈僕はフェイ。君の友達の菖蒲ちゃんが…〉
菖蒲ちゃんに何かがあった…?だから何も来なかったの?聞いたことない名前。一体誰なんだろう。
『起きて下さい、剣城君』
「ん…遠坂…?」
『これ、見て下さい』
「戻って来るな?」
『はい、どうやら彼方では何かが起きている様です。どうしましょうか…』
「俺達だけ蚊帳の外という訳にもいかない」
『ですよね。出来ることがあるなら、私達もやりたいです』