第10章 Cheerfulness!〈遠坂 雪音〉
「最終日に食べに行くか」
『はい!』
やっとアトラクションの順番が回ってきて、コースターの3列目辺りに乗り込んだ。
『どんな感じなんでしょうか…』
「いや…想像しない方が良いぞ」
『え…?』
剣城君が指差す方向を見ると、明かにヤバそうな山があった。え、最初からあんなハードコース進むの…?
『⁉︎』
「大丈夫か?」
『が、頑張ります!』
自分で言っておいて何を頑張るんだっていう話なんだけど…。そうだ、菖蒲ちゃんが言ってた。窮地に陥ったら、一度無心になると良いって。そう、無心…。無心、無心…。
『やっぱり無理です〜!』
あまりに無理すぎて剣城君の方を見る余裕もない。唯々このジェットコースターが終わるのを待った。何だか知らない音楽も流れていた様な気もするけど…良く覚えていない。
『…』
「大丈夫か、遠坂」
『よ、世の中にはこんなジェットコースターもあるんですね…!』
「取り敢えず少し休むか」
『そ、そうですね…』
500mlのペットボトルの持ち込みは可能だったので、少し飲む事にした。
「一発目からハードだったな」
『すみません…。チョイスを間違えてしまいました…』
「いや、俺は平気だが…」
『取り敢えず、次はもう少しゆったりした所に行きませんか?』
「そうだな」
日陰だったから良かったものの、日向で休んでいたら絶対に熱中症になっていただろう。
「そういえば、学校には慣れたのか?」
『はい。菖蒲ちゃんのお陰もありますけど…。やっと中学生になれた様な気がします』
「そうか、良かったな」
『何だか、剣城君、お父さんみたいですね』
「⁉︎⁉︎」
『あ、悪い意味では無くて、その…色々心配してくれる所とか…!』
「そ、そうか…」
多分、優しさが溢れ出てるとかそういう感じなんだと思うんだけど…。本人は恐らくその優しさに気付いてないんだろうなぁ。
『あ、このボートツアー形式の物なら、涼しくて丁度良いんじゃないでしょうか!』
「じゃあ次はそこだな」
『楽しみですね!』
初日は行く前に瑠璃さんにツインテールに結んで貰った。その後、ヘアアイロンで巻いて貰って、毛先をワンカールさせている。
『そういえば、天馬君も今沖縄でプログラムに行っているんですよね』
「ああ。彼奴の出身地だからな」
『そうだったんですか…!沖縄って行った事ないので、行ってみたいです』