第10章 Cheerfulness!〈遠坂 雪音〉
『大阪、到着です!』
「そんなにはしゃぐと転ぶぞ」
『すみません…こうやって東京の外に出るのが初めてで…』
「そうだったな」
今日は残りの時間で観光をするらしい。というのも、着いた時刻がもう午後を過ぎているからである。明日からプログラムを始めて、最終日も観光らしい。
「最初は…例のテーマパークか」
『そうですね!あまり長い時間は楽しめませんけど、折角来たのなら、行きたいですよね!』
セーラスタイルの白いワンピースがふわりと揺れた。水色の襟とネクタイが白に良く映える。
『剣城君はこういった所に来た事はあるんですか?』
「ああ、小さい頃に家族で」
『羨ましいです。私も今日で、テーマパークデビューですよ!』
嬉しくなってぴょんぴょんと跳ね回った。
「危ない!」
『ふえっ…』
「気を付けろ。人が多い」
『は、はい…』
ついつい調子に乗ってしまう。やっぱり落ち着きが足りないって言われるのはこういう事なのかも…。
「行くぞ」
『はい!』
中に入ると、人の多さに圧倒される。こんなに人が多いと迷子になってしまいそうだ。
「遠坂」
『は、はい!』
「離れるなよ」
『だ、大丈夫ですよ!』
どうも心配なのか、私の手を握ってくれている。私のものよりも一回り大きい手が包み込んだ。
「遠坂は何に乗りたいんだ」
『あ、あれはどうでしょう!』
いかにもジェットコースターofジェットコースターと言えそうなもの。一度乗ってみたかった。
「行くか」
『はい!』
剣城君が黒の七分袖のシャツを靡かせた。それと同時にに愛用?しているチェーンも揺れる。
『やっぱり夏なだけあって暑いですね』
「そうだな」
『菖蒲ちゃん達もきっと今頃福島で頑張っているんでしょうね』
「福島は涼しくて良いな」
確かに、福島は涼しくて良さそうだ。明日からプログラムな訳だし、はしゃぎ過ぎない様にしないと。
『剣城君も明日から頑張りましょうね』
「ああ」
『大阪って、食べ物が美味しそうなイメージがあるんですけど、剣城君はどうですか?』
「食い倒れとも言うからな。大阪に来たからには本場のたこ焼きを食べるのも悪く無いんじゃないか」
剣城君も何だかんだ言って食べたそう。ホテルに戻ったら、沢山食べる事が出来るのだろうか。
「遠坂は何か食べたい物は?」
『そうですね…。お好み焼きやイカ焼きなんかも…』