第9章 Amusement!〈栗花落 菖蒲〉
「菖蒲もかなり取ってきたんだね」
『デザートこそ命だから』
そのまま席についてデザートを頬張る。これなら延々と食べられそう。
カシャ
『ん?』
「また菖蒲のハムスター写真撮っちゃった」
しまった。甘いもので心がリラックス状態に…。
『消して』
「やだ」
これが太陽のスマホに残るのか…。
「菖蒲可愛い」
『だからそういうお世辞いらないから』
「はいはい」
んもっんもっ…という効果音でも付きそうな勢いでお互い料理を頬張る。黙々と甘味を食べ続け、遂に完食した。
「『ご馳走さまでした』」
二人で手を合わせてホテルのレストランを後にした。
「いや〜美味しかった!」
『うん』
「菖蒲はほぼ甘いものだったね」
『好きだから。甘いもの』
「そっか」
『じゃ、後で行くから』
「はーい」
部屋に戻ってお風呂に入る準備をした。パジャマと下着を用意してお風呂場へ向かう。まずは髪と体を洗い、お風呂に湯を貼った。
『ふぅ…』
今日も結構疲れた様な…。いや、でも太陽の方が身体動かして疲れてるんだろうな。早めに切り上げて良く寝てもらおう。
『よし』
体が温まった所で上がって、髪を乾かし始める。若葉の様な鮮緑の髪は腰辺りまででぱっつんに切り揃えられている。触角も同じ様に顎辺りでぱっつんになっている。一度頭頂部で結び、シュシュでお団子に纏めた。
準備が終わった所でルーズリーフと筆箱を持ち出して、太陽の部屋に向かう。
コンコンコン
三回ノックすると、元気よく迎え入れてくれた。
『太陽もお風呂入ったんだ』
「うん!」
『髪乾かさないの?風邪ひくよ?』
「いつも自然乾燥だから大丈夫だって」
『そっか』
濡れてぺったんこになった髪が、少しいつもの雰囲気と変わっている。
『髪とペン持ってきたから、予定立てよっか』
「うん!」
『お邪魔しまーす』
太陽の部屋にのそのそと入っていく。私の部屋とは対照的な部屋で、少し戸惑う。
『まずはベタな所から調べてみる?』
「大内宿だって」
『大内宿?』
「うん、あ、浴衣もレンタル出来るって」
『え』
「連絡すればレンタル出来るらしいよ」
『い、いや…良いよ。お金かかるし』
一応お金はそれなりに持ってきてるけど…。
「僕が見たいから、駄目?」
『え〜』
「僕がお金払うから!」
『良いよ。自分で出す。その代わり今度甘いもの買って』