第8章 Departure!〈栗花落 菖蒲〉
「そうね。有効利用させて貰うわ」
『はい。是非!』
「さて、そろそろ休憩にしましょうか。皆!休憩にしましょう!ドリンク作ってあるわよ!」
先生がそう言うと、子供達がわぁ〜と集まってくる。
『お疲れ様、皆』
「菖蒲」
『太陽も、お疲れ様』
「うん」
『後半も頑張ってね』
「勿論!」
自分も体を動かしている訳だから、汗が滴っている。なんだか、親戚の小さい子がお風呂上がりにピョンピョン跳ね回ってる姿を唐突に思い出した。
『太陽、ほら。汗拭かないと風邪ひくよ』
「ありがとう、菖蒲」
『うん』
また元気にグラウンドへ戻っていく様子を見ると、本当に完全復活したんだなと思う。病院で話していた頃が、もう昔のようだ。
「菖蒲ちゃんと太陽君は仲が良いのね。違う学校だって聞いていたんだけど」
『はい。太陽は病院で知り合って…まだ入院してた頃に』
「入院していたの?」
『はい。太陽が入院していて、その時、丁度私の姉も入院していたので…。偶々出会って話をしていたら、いつの間にかこんな感じに…』
「懐かしいわねぇ。私も青春時代を思い出すわぁ」
『先生もまだお若いんですから、そんな事言わないで下さい』
「あら、ありがとう」
実際本当に若く見える。30前半と言ったところだろうか。恐らく新任の先生なのかもしれない。
『あ、シート書かなきゃ』
忘れていた業務を再び行う。今日の一日でとても伸びた子が数人いる。他の子ももっと練習していけば、コツを掴んで上手になっていくだろう。
『13番の子、凄く動きが活発になりましたね』
「そうね。今迄積極的に動く子じゃ無かったんだけど…今日教えてもらった事を吸収して随分成長したみたい」
『私達としてもそういった子が増えてくれる事が嬉しいです』
「もっと教わりたい所だけど、今日はこれで終わりみたい」
『そうみたいですね』
「皆!もう時間よ!」
子供達ももっとやりたかったという感じの顔をしている。そんな風に思ってくれる事が嬉しい。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん!ありがとうございました!」
皆でお礼を言ってくれた。その笑顔はキラキラと輝いていて、本当に来て良かったと思う。
『こちらこそ、ありがとうございました』
「皆とサッカー出来て本当に楽しかったよ!ありがとう!」
片付けをしつつ、先生にシートを渡した。先生も嬉しそうな顔で受け取ってくれた。