第8章 Departure!〈栗花落 菖蒲〉
「菖蒲の食べてる所を撮ろうと思って」
『やめて』
「え〜」
『肖像権』
「うっ…」
『まぁ…迷惑にならない範囲なら良いよ。あんまりはしゃぎすぎないでね』
「やった!」
撮られてるのってなんだか落ち着かないんだけど…まぁ良いや。さっさと食べ終われば良いだけの話で。
『ご馳走様でした』
「いっぱい撮れた」
『それじゃあ、時間もないし行こっか』
「うん!」
ご飯も食べ終えたところで、先ずは初日の学校へと向かう。ここからは歩いて行ける距離らしいので多分大丈夫だろう。
『見えて来たよ。太陽。あれが一つ目の小学校』
「おぉ〜!」
此処からでも元気な声が聞こえるくらいに、とても活発な様子が伝わってくる。
『腕の見せ所だね。太陽』
「病院でそれなりにはやってたから、大丈夫!」
なんとも言えないけど…太陽の事なら、きっと大丈夫だと思う。
『こんにちは。サッカー教育プログラムで来ました。栗花落 菖蒲です』
「同じく雨宮 太陽です」
「宜しくね。二人とも。私は担当の小島 梨沙子です」
「『宜しくお願いします』」
「じゃあ菖蒲ちゃんはこちらに来てもらえるかしら」
『はい』
私はドリンク作りと、皆の記録を担当する。最初から最後までどれだけ伸びたのかを記録し、これからどういった練習をしていけば良いのかを示す。帝国で散々やってきたことだから、難しい事では無いと思う。
「やっぱり手際良いわね〜」
『中学でもマネージャーをさせて頂いているので…』
「凄いわね!今日は色々と大変だと思うけど、宜しくね」
『はい』
先生も温厚な方で良かった。ドリンクを作り終えれば、ベンチに戻ってバインダーにシートを挟む。帝国で利用している紙を持ってきた。帝国程細かく記入しなくても大丈夫だと思うけど。
「皆〜!せいれーつ!」
「はーい!」
小さい子の面倒は見慣れているらしく、随分と手際が良いというかなんていうか。中学生のくせに教え方も無駄に上手いし。
「菖蒲ちゃん。その紙は何かしら」
『はい。私の学校で利用しているシートです。一日一枚この紙に記入して、誰がどれだけ伸びたか、これからどのような練習をすれば良いのかを書いていくんです。この練習が終わったら、先生にお渡しします』
「ありがとう!やっぱり強豪校は凄いわね!」
『こうやって基本に立ち返って練習していく事が大切なんですよ』