第1章 Prologue!〈栗花落 菖蒲〉
「スーパーの商品を研究…するのか…?」
『え、そんな驚く事かな?案外面白いと思うけど』
どれが高いけど美味しいとか、どれが安くて不味いとか、いろいろ試してみるのも案外ご飯を作る身としては楽しかったりする。
『お金と時間に余裕があるなら良いんじゃない』
「ま、まぁそのうちだな」
『それじゃあ、会計も終わった事だし、バイバイ』
「あ、ああ」
雅野君に手を振って自分の家に戻った。誰も居ない家で一人寂しく料理を作って食べる。帝国は毎日宿題の量が膨大だから、すぐに手を付けないととてもじゃないけど間に合わない。
『あ、お風呂洗って入れないと』
こうも一人だとやる事が沢山あるのだ。今まで姉さんがやってくれていたお風呂洗いや洗濯も全部自分でやらなくてはいけない。
『はぁ…腰痛い』
主婦になったらきっとこんな感じなんだろうかと思った。全部一人でやるにはかなり大変だ。きっと凄く大変なんだろうな。これに加えて掃除もしたり子供がいたら面倒を見たりでいろいろ大変なんだろう。
「ただいまぁ〜」
『父さん、母さん』
「え、菖蒲、全部やってくれたの〜?ありがと〜!」
『ちょ、お母さん』
「さすが菖蒲〜!お嫁に出してもぜんっぜん恥ずかしくなぁ〜い!」
『か、母さん離して…』
「もう…反抗期?」
『べ、別にそういう訳じゃ…』
「ほら、桜。そろそろ菖蒲を解放してあげないと。菖蒲だってやる事あるんだから」
「はぁ〜い…」
母さんと姉さんはとても良く似ている。DNAをそのままコピーしたみたいだ。いっつも二人同時にくっついてくるから、今日は一人分なだけまだ引っぺがしやすい。
『姉さんどうだった?』
「退屈そうにしていたわ。菖蒲が構ってくれない〜って」
『そんな事言ったって…』
「また明日も病院行ってあげてね」
『ああ、うん。元からその心算で』
「あら、仲良いわね♪うふふ」
『いや、別に太陽との約束が…』
あ、やばい…。変な事口走っちゃった…。くそ、油断してた…。
「え、太陽って誰〜?もしかして彼氏〜?菖蒲ももうお年頃だもんね〜」
「え⁉︎彼氏⁉︎パパそんな事聞いてないんだけど⁉︎」
『いや、今日初めて会った人だから、彼氏も何も…』
「恥ずかしがらなくて良いのよ、菖蒲〜」
「菖蒲!本当なのかい⁉︎」
『あ〜もう!うるさい!そんなんじゃないから!部屋にいるから入って来ないでね!』