第1章 Prologue!〈栗花落 菖蒲〉
小学校の卒業前、記念にサッカーをやる事になった。雪音も最後だからとサッカーに参加した。最初は雪音が運動音痴だと知って友達もボールを渡そうとしなかった。けれど、サッカーは、サッカーだけは彼女の「味方」だった。
「見ましたか!菖蒲ちゃん!一点入りました!」
楽しそうにVサインをしていた姿を今でも良く覚えている。最初はあまり動かなかった雪音も、次第に相手からボールを奪って次々とゴールを決めていった。
「雪音ちゃんすごーい!」
「サッカー凄い上手なんだね!」
「えへへ…」
同級生に褒められて喜んでいたが…その数日後、突如彼女は姿を消した。確かその日は私と公園で遊んでいたのだ。帰る時までは雪音と一緒に居たのだ。私は。けれど…その後、行方不明となってしまった。
「菖蒲ちゃん!中学も一緒ですね!」
あんなに喜んでいたのに。一緒に帝国学園に受かって喜んでいたのに。どうして、居なくなってしまったの。雪音…何処にいるの。
「栗花落」
『あ、雅野君』
「買い出しか?」
『うん、夕飯の』
「そうか、奇遇だな」
『え、雅野君も買い出し行くんだ』
「失礼だな」
『ごめん』
雅野君は確かサッカー部の一年生でゴールキーパーを務めている。ただ、今はシードとかいう連中が混ざっているらしく不安定な状態らしい。
『今日は練習無かったの?』
「ああ、月に一度の休暇だそうだ」
『成る程…』
「栗花落もマネージャーになる気は無いか?」
『マネージャー…か』
「男所帯の中じゃ嫌か?」
『いや、別に良いけど…。マネージャーって何をやれば良いの?』
「ドリンク作りや洗濯等だな」
『う〜ん、それくらいなら。でも、もう少し待って貰って良いかな。今、姉が入院中で、すぐに退院すると思うんだけど、それまで待ってて欲しいというか』
「分かった。それで監督に話を通しておいても良いか?」
『うん。良いよ』
サッカー部に行けば、雪音の事も何か分かるかもしれない。警察も捜索していると言うが、一向に進んでいる気配は無いと言う。そうなれば、私自身でやるしかない。私が雪音を見つけないと。
『あ、それ…』
「どうかしたのか?」
『それ、こっちの方が安くて美味しいんだよ』
「そうなのか」
『うん。毎回来てる内に分かる様になっちゃったから』
「為になるな」
『案外研究してみると面白いと思う』
「研究…?」
『そう、研究』