第6章 Collapse!〈遠坂 雪音〉
『はぁ…』
ぐるぐると絡みつく思考を断ち切って散歩に行く事にした。病院の中にいるのも案外暇で、明日はヒロトさんが凄いものを持ってきてくれると聞いたけど…。何が来るんだろうか。暇を潰せる物だったら良いなぁ。
「あら、雪音ちゃん」
『冬花さん』
「暇潰し?」
『はい。何もやる事なくて…』
「それならスケッチブックや塗り絵の本を買ってみるのはどうかしら。下にはコンビニもあるし、コピー機もあるしね」
『確かに、良いかもしれないですね』
「そういえば、オレンジ色の髪をした男の子を見なかったかしら」
『ごめんなさい…見てないです』
「そう…。今日も抜け出しちゃって。菖蒲ちゃんが居るとちゃんと病室にいるんだけど」
『菖蒲ちゃん…?』
菖蒲ちゃん、その男の子と仲が良いのかな?もしかして帝国学園の生徒だったり?
「そうよ。太陽君と凄く仲が良くて、毎日ここに通ってるんだけど…菖蒲ちゃんが居なくなるとすぐこれで…」
『大変ですね』
「ええ。でもこれでも良い方なの。菖蒲ちゃんが来る前はすごく大変だったんだから」
『菖蒲ちゃん…だから毎日来てたんですね』
「太陽君が毎日来て欲しいって言ってるみたい」
それって…?もしかして太陽君という子は菖蒲ちゃんが好きなのでは?頑張ってるのかな。菖蒲ちゃんはしっかりしてるけど、そういうのには疎いから、太陽君はきっと大変な思いをするだろう。
『でも、菖蒲ちゃんも楽しそうだったので何よりです』
「二人とも知り合いなのね」
『はい。ずっと昔からの親友です』
「そう。その絆を大切にしてね」
『はい』
「それじゃあ、私はまた太陽君を探してくるわ」
『はい』
「そうだ。とても、その髪型似合ってるわ」
『ありがとうございます』
冬花さんが慌ただしく失踪者を探す所を見送りながら、コンビニに向かった。一応お財布も持ってきたので、何か買いたければ買えないこともない。やっぱり病人の暇潰しに最適な塗り絵の本がある。色鉛筆も24色の物を購入して、早速塗ることにした。
『折角なら屋上に行って塗ろうかな』
屋上は患者さんも勿論出入りできる様にはなっている。そのかわりとてもフェンスが高い。
『誰もいないのかな』
覗いてみるけれど、誰もいないみたいだった。ここのベンチは公園にある様な感じでテーブルが付いている。買ったのは童話をイメージした塗り絵の本。