第6章 Collapse!〈遠坂 雪音〉
麻乃さん…朝日奈さんは至極苦しそうな顔をしていた。
『でも、私はこの通り大丈夫ですから!気にしないで下さい!』
「雪音ちゃんはやっぱり優しい子だね」
『そんな事ないです』
「励ましに来るつもりが、逆に励まされちゃった」
『気にしないで下さい。朝日奈さん』
「乃愛で良いよ」
『じゃあ…乃愛さん』
「うん」
乃愛さんはとても綺麗だった。亜麻色の髪にペリドットの様な明るい緑の瞳。こんなに綺麗な人、男性の方が絶対放っておかない。
「そうだ。紹介したい人がいたの」
『…?』
「修也」
その声と共に、何処か見覚えのある様な、ない様な人が病室の入ってきた。
「紹介するね。豪炎寺修也。フィフスセクターにいた頃の聖帝、イシド シュウジ」
『あっ…』
「よろしく頼む」
「会ってすぐ、彼氏がどうとか、気になってたでしょ?」
『は、はい…!』
「本当はもっと早く入籍して結婚式を開くつもりだったの。でも、フィフスセクターが思ったよりも早く出てきちゃったから、全部キャンセルしたって訳」
『で、ですよね…!』
「…?」
『い、いえ!此方の話です…!』
「でね。結婚式に…来ませんかっていう…話…なんだけど…」
『い、良いんですか⁉︎』
「勿論。良ければリングガールとか引き受けて貰えないかなぁ…と」
リングガールは確か指輪を運ぶ係で、小柄な子がやると聞いたことがある。確かに、普通の中学生に比べればかなり身長も小さい。でも…指輪を運ぶってかなり重要な役目であり…?
『わ、私なんかがそんな重要な役割を…?』
「雪音ちゃんにやってほしくて」
『が、頑張ります!』
「じゃあ、受けてくれるってことで良いかな?」
『はい!』
「ありがとう!」
豪炎寺さんはこんな綺麗な人を奥さんとして迎えられて本当に嬉しいだろうなぁ。
『乃愛さんの幸せそうな姿を見る事が出来て良かったです』
「え?そうかな?」
『はい。少なくともゴッドエデンにいる時よりは幸せそうですよ』
「それはそうかも。あ、もうこんな時間。長居しちゃってごめんね。それじゃあお大事に」
『はい。ありがとうございます』
乃愛さんと豪炎寺さんが出て行ったのを見て、少し羨ましいなと思った。私は将来どうなるんだろうか、とか、考え込んでしまう。でもきっと、親が犯罪者ってだけできっと疎まれるに違いない。でも、別に今から考えてもどうしようもないか。