第6章 Collapse!〈遠坂 雪音〉
天馬君は話してみると、本当に真っ直ぐな人なんだなって思う。
「そう言えば、前にあった時と雰囲気違うね」
「お、おい…」
顔を真っ赤にして剣城君が天馬君を小突いた。まぁ確かに、今日の朝早く来た菖蒲ちゃんによって、高めに結ばれたツインテールはほとんど動く事なく、重力に従ってただぶらんぶらんとしていた。
「その二つ結び、良いね!」
「ツインテールだろ」
この二人を見てると結構面白い。何だかコントの様に思える。
『ありがとうございます』
「それじゃあ俺達そろそろ行くね!これから練習があるんだ」
『部活ですか?』
「うん!」
『頑張って下さいね』
「ありがとう!」
そう言って天馬君は元気に病室を出て行った。そのテンポで剣城君も出て行くのかなと思ったら、病室のドアの手前で立ち止まった。
『?』
「その髪型…似合ってる」
聞こえるか聞こえないか位の小声で確かにそう言った。でも、病室が静かだった事が幸いし、人がいる時よりははっきりと聞こえた。
『あ…ありがとう…ございます…』
段々と小さくなりながらお礼を述べた。それだけ言って逃げる様に病室を出て行ってしまった彼の面影をずっと感じていた。
『ツインテールも…悪くない、かも…』
クセのあるツインテールの毛先をくるくると指に巻き付けながら、ぼそっと呟く。
「雪音ちゃん、昼食持ってきたわよ」
『ありがとうございます…!』
くるくると動かしていた指を咄嗟にしまって、ぎこちない笑顔を作った。持ってきてくれたご飯を食べ始めて、午後は少しお散歩でもしようと窓の方を見た。天馬君と剣城君が走りながら雷門中を目指している所だった。思わず笑みが溢れてしまう。
「どうかしたの?」
『え…?』
病室のドアに目を向けると、そこには驚くべき人物が立っていた。
『麻乃さん…!』
「その名前は偽名なんだ。私の本当の名前は朝日奈 乃愛。お見舞いに来たんだ。容態は大丈夫そう?」
『はい。ありがとうございます』
「そっか。良かった。ゴッドエデンを雪音ちゃんが出てから、ずっと心配してたの。でも…決勝戦は…」
『いえ…』
「私も必死に止めたんだけど…」
『え…』
「千宮路に直接頼んだんだ。これ以上こんな事したら…雪音ちゃんが壊れちゃうって。でも…あいつもあいつで必死だったみたい。折角の切り札である雪音ちゃんを…使わずにはいられなかったみたい」