第1章 Prologue!〈栗花落 菖蒲〉
さらに外にいる時は礼装用の白い手袋をはめている。後は黒のニーハイに茶色のローファー。本当はニーハイ好きじゃ無いんだけど、校則が厳しいから仕方ない。
「お姉さんは何処の中学?」
『そのまま学区の中学校に行ったから、新雲学園だよ』
「じゃあ僕と同じだ!」
『へぇ…雨宮君も新雲なんだ』
「固いな〜太陽で良いよ」
『じゃあ…たいよ…う…』
男の子の名前なんてあんまり呼んだ事無かったから少し緊張した。
「か〜わい〜!」
『い、良いからそういうの…!』
「姉妹で違う学校なんだね」
『姉さんと一緒に帝国を受験したんだけど、姉さんが落ちちゃったから』
「え、同い年?」
『ああ、うん。双子なの。私と姉さんは』
「へぇ〜!道理で何かおかしいと思った訳だ」
『ごめん。言うの忘れてた』
「双子って事はよく似てるんだ?」
『まぁ、顔だけ見ればね。いつも姉さんは髪を下ろしてるけど、私は纏めてるから見れば分かると思うよ』
双子と言っても性格はほぼ正反対で、誰にでも明るく友達作りが得意な姉さんと、良くサバサバしていると言われて友達作りが苦手な私。
「じゃあ、間違って話しかける事も無いね」
『そうだね。あ、もうそろそろ夕飯の買い出しに行かないと』
「家庭的だね」
『父さんも母さんもいつも帰りが遅いから。私がご飯を作る役割なの』
「そうなんだ!」
『それじゃあ…』
「ねぇ!また明日ここに来てよ!」
『え?』
「嫌なら良いけど…」
『良いよ。別に嫌じゃないし』
不思議と、太陽と話すのは嫌じゃなかった。それに、何故だか知りたいと思ってしまう自分がいる。どうしてだろう。こんな事、してる場合じゃないのに。
『あ、最後に』
「ん?」
『遠坂 雪音って子、知らない?』
「いや、聞いた事ないけど…」
『そっか。ありがとう。じゃあまた明日』
手を振って、病室を出た。外を見ると暗くなり始めていて、西の方がまだ少し明るい程度だ。
『急がないと…タイムセールが始まっちゃう…』
スーパーに向かっている間、親友の遠坂 雪音について考えていた。雪音は…春休みが始まって直ぐに行方不明となった。理由は何故なのかも全く分かっていない。
『雪音…戻ってきて…』
雪音は身体が弱くて体育だって満足に身体を動かすことができない。運動だっててんでダメだった。でも、彼女が唯一の才能を見せたのはサッカーだった。