第46章 Graduation!〈遠坂 雪音〉
高校一年の時だけで色々なことが変わった分、2年生と3年生では変わったものを慈しむようになった。大きな成長と言えるかもしれない。
『さて、皆お昼寝始めた頃だろうし、今のうちに帰ろうかな』
「あら、遊んでいかないの?」
『次来た時は沢山遊ぶけど、今日はこれで!』
「そう。また来てね!」
『うん、また』
鞄を拾い上げて、肩にかける。菖蒲や雨宮君もお日さま園から御暇するらしい。
「雪音」
『京介。今日はどこに行く?』
「お前の好きなところ」
『いつもそれ…。じゃあ今日は河川敷に行こう?今日は暖かいから、フカフカの芝生の上で寝たら絶対気持ちいいよ』
「そうだな」
靴を履き終わった京介の手を取って、お日さま園から出た。瑠璃さんに手を振って、その後は振り返らなかった。
「私たちは別の所行くから、今日はこれで」
『うん。春休みにまた遊ぼうね、菖蒲』
「勿論!じゃあまた!」
「じゃあね〜!」
菖蒲と雨宮君はお日さま園を少し進んだ所で別れた。私たちは私たちで行きたいところに行く。
「良いのか、河川敷で」
『河川敷が良いんだよ』
爽やかな風と、水のせせらぎの音が心地良い。河川敷のサッカーコートでは子供達が元気に遊んでいる。
『懐かしいね。中学生の頃、此処で京介が未来の人に連れ去られたことがあったでしょ』
「そうだな」
『遠い昔みたいだね。まだ5年くらい前なのに』
過去を後悔する事はもうしない。後悔しないように次から気をつければ良いと、ここ数年で学んだから。
『フェイ君達も未来で元気にしてるかなあ』
「きっとな」
『そっか、なら良いけど』
私には、中学生あたりの記憶があまりない。病院のベッドで目を覚ましていない時間が多かったからだ。だから京介が少し羨ましい。彼は自分の目で沢山のことを見てきたのだろう。銀河を飛び越えて違う星にまで行ったと聞いた。
『中学生から高校1年くらいまで、凄く大変だったけどね。今はもう笑ってそんなこともあったねって言えるんだ。京介のおかげだよ、ありがとう』
「俺は別に何もしてない」
『ううん。沢山、私と関わろうとしてくれたでしょ。どんなに拒否しても踏み込んできて。今となっては嬉しいよ』
素直に気持ちを伝えるのは照れ臭い。けれど、伝えた方がいい事があるってことも私は知っているのだ。後悔してからではダメだと、自分に戒めているから。