第46章 Graduation!〈遠坂 雪音〉
「なんか…感動しちゃうわね…!」
『えっ、何?瑠璃さん…』
「だって、昔は食べるのを待ってた子が、こうやってお手伝いしてくれるってすっごく尊いじゃない⁉︎」
目をキラキラさせながらそう言ってくれる瑠璃さんの存在がありがたかった。瑠璃さんは褒めて伸ばすタイプだから、その言葉に助けられた子供たちも多いだろう。
『確認したからちゃんと焼けてるはず!どうぞ!』
「代わるよ雪音」
『頼んだ』
瑠璃さんが躊躇なく私が焼いたハンバーグを口に運ぶ。
「上手に焼けてる!美味しいよ、雪音ちゃん!」
箸を置いて頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。この手が私は一等好きだ。
『私も自分で焼いたやつ食べたい』
ぱくっと一口食べてみると、確かに美味しく焼けていた。タネを美味しく作ってくれた瑠璃さんのおかげかもしれないが。
「家庭科部に入ったっていうけど、本当に上手ね」
『本当ですか?えへへ、嬉しい…』
褒めてもらえるのは嬉しかった。母がいなかったので。お日さま園の子は殆どみんなヒロトさんと瑠璃さんを両親に見立てる。授業参観にも2人は必ず来てくれる。それが親を亡くした私たちにとってはとっても嬉しかった。
「はい、これでハンバーグ全部焼けたはず」
「ありがとうね、菖蒲ちゃん」
そして瑠璃さんは菖蒲のハンバーグも遠慮なく口に入れた。
「まぁ美味しい!菖蒲ちゃんもとっても上手ね!」
そうして菖蒲の髪もくしゃくしゃと撫でる。菖蒲も嬉しそうに笑っている。瑠璃さんが作ったこの暖かさを、私は守りたいと思った。それだけなのだ。しかし、守るというのは結構難しい。それも良く知っている。
「あら、もうハンバーグ全部なくなったわね。ふふ、みんなたくさん食べてくれて助かったわ」
『それじゃあ食べ終わった人は食器を軽くすすいで食洗機に入れてね』
分かったと片手を上げて男子陣はまだ食べ続けていた。特に京介たちは試合の後だしお腹が空いていたのだろう。
『雪音ちゃん。いつでもお日さま園に遊びに来てね。子供たちも、貴方の事大好きだから』
「もちろん。たくさん遊びに行きます」
『それと菖蒲ちゃんや剣城君、雨宮君も。いつでも遊びに来て。歓迎するわ』
「「はい!」」
2人揃って返事をしていた。2人も結構仲が良さそうだ。私と菖蒲との関わりがあるから、自然に話す機会も増えたのかもしれない。