第46章 Graduation!〈遠坂 雪音〉
「雪音、遅かったね」
『ま、まぁね…』
「何かあったでしょ?」
『べ、別に!』
照れ隠しをしながら手を合わせて、端に手をつける。小さい子達はもう食べ始めていて、食が細い子はもうギブアップしている。
『おいし〜!ハンバーグすごい美味しい!』
「あらそう?良かった〜!」
ニコニコしながらヘラを片手にハンバーグをひっくり返している瑠璃さんは、本当に嬉しそうだった。
『それにしても豪勢だね。凄いハンバーグまだまだあるけど…』
「育ち盛りの男の子いるから、たくさん食べると思って…沢山買っちゃったの。遠慮せず食べてね」
『だって菖蒲』
「そうなんだ。じゃあ私ももう一つ食べちゃおうかな」
そんな私達を他所に凄い勢いでハンバーグを平らげていく男子たちがいる。もちろん、天馬と雨宮君と京介だ。ほとんどのハンバーグをこの3人が食べ尽くしてくれることだろう。小さい子達はもうギブアップで段々席から離れていった。残っているのは中学生以上の男子と高校生の私たちだった。
『あれ、そういえばヒロトさんは?ヒロトさんなら瑠璃さんの料理喜んで食べそうなのに』
「それが、急なお仕事で本社に行かなくちゃいけなくなっちゃったみたいなの。ごねて送り出すの大変だった〜!」
『あはは…なるほどね』
本当に泣く泣く行ったのだろう。その様子が容易に想像できる。
『ふ〜そろそろお腹いっぱい。瑠璃さん、私代わりますよ』
「良いのよ。本日の主役なんだから」
『でもさっきからずっと立ちっぱなしだし、瑠璃さんも食べて。このままだと食べ盛り男子たちに全部食べられちゃうもの』
「あら、ありがとう。じゃあお願いするわ」
家庭科部の経験もあって、料理は割と自信がある。ハンバーグは作ったことがあるからおそらく大丈夫なはず。
「雪音こそ、来たばっかりだし私代わるよ」
『ううん。大丈夫だよ』
「じゃあ他に手伝えること…」
『うーん、お日さま園は食洗機で、食器は自分で濯いで入れるようにしてるから皿洗いもないし…』
「じゃあそれ焼いたら交換しよう」
『分かった』
ハンバーグ焼く上で大切なことは家庭科部で習った。焼き具合を確かめる時、赤い汁が出たらまだダメだということ。それからフライパンで蓋を閉めて焼く前に、お酒を回し入れておくと良いということ。ない場合は水でも良いらしい。ポイントを押さえて、焦げないように焼くことが大切だ。