第46章 Graduation!〈遠坂 雪音〉
試合が終わると、選手たちは一気に女子達に囲まれる。プレゼントだの、ユニフォーム着てるのに第二ボタンくれないかだの、色んな想いが渦巻いているのでなるべく近寄りたくない。
『菖蒲は行かないの?』
「雪音だって」
『わざわざあんなところに行かなくても、私は彼女だから、後でたくさん時間取れるし』
「うわぁ…高みの見物」
『菖蒲だって、おんなじように思ってるから行かないんでしょ?』
「バレた?」
2人で笑っていると、ずんずんと雨宮君と京介が近付いてくる。
『え、ど、どうしたの…?うわぁっ!』
びっくりして立ち上がるとそのままきつい位に抱きしめられる。前方から凄い歓声とブーイングが飛んできた。
『な、何⁉︎どうしたの⁉︎』
「喋るな」
驚いたけど、ゆっくりと手を回した。菖蒲も訳も分からず雨宮君に抱きしめられていた。
『ちょ、ちょっと皆見てるし…苦しいよ…!』
そう言うと私を抱きしめる力を弱めて離れた。そしてすぐに唇に温かい感触が訪れる。
『ん⁉︎』
目を見開いてしまった。近い、顔が。驚いて目を見開いているものだから、視界いっぱいに顔がある。もう歓声を気にしている余裕はなかった。ようやく離れた頃にはもう混乱で何が何だか分からなくなっていた。
『ななな、何⁉︎なんかのドッキリ⁉︎』
「そんな訳ないだろ」
『じゃ、じゃあどうして⁉︎』
「見せつけだ」
こんな積極的な性格だったっけ、と目を回しながらたくさん考えた。考えるたびに先ほどのキスが出てきて余計に混乱する。
『ちょ、ちょっと待って、一旦人目のつかないとこ行こう!恥ずかしいって!』
この場に保護者がいなくて良かった。絶対にネタにされるだろうなと考えながら手を引いて校庭を後にした。
『な、なんでいきなりみんなの前でき、キスしたの…⁉︎』
「そうしたかったから」
『あ、うぅ…そ、そうですか…』
そう言って下を向いた。急に恥ずかしくて顔が見れなかった。
「もう一回、良いか」
『な、なんで⁉︎』
「したいから」
積極的すぎてびっくりした。確かに退院してから遠慮はなくなった気がするけど。
『い、いいよ』
「分かった。目は瞑っておけ」
『は、はひ…』
目を瞑って待った。さっきよりは勢いがなく、優しい優しいキスだった。
『っは…』
息が足りなくなって離れる。京介を見つめると、満足そうに微笑んでいた。