第46章 Graduation!〈遠坂 雪音〉
身体に不調が無くなって2年が経過した。本日をもって、私達は空ヶ咲高校を卒業する。
「雪音〜!早く早く!写真!」
『ちょ、ちょっと待ってよ!まだ前髪が…』
「大丈夫大丈夫。問題ないから、ほら行こう」
菖蒲に手を引っ張られて瑠璃さんとヒロトさんの所へ向かった。
「皆、卒業おめでとう」
『ありがと!ヒロトさん!』
「さ、ほら並んで。写真を撮るから」
私と菖蒲、それから京介に雨宮君と天馬。いつものメンツだった。
「撮るよ!はい、チーズ!」
卒業証書片手にピースをして、最高の笑顔で。
『どう?撮れた?』
「うん。大丈夫」
あの日、目覚めてから本当にたくさんの人がお見舞いに来た。京介は元からいたけど、雨宮君や菖蒲、それに天馬も。ヒロトさんに瑠璃さん、瑪瑙さん、乃愛さんや豪炎寺さんまで。沢山の人がお見舞いに来てくれたから寂しくなかった。京介や菖蒲はボロ泣きしたから対応に困っちゃったけど、私を心配してくれたと分かっているから感謝の言葉を返した。
『なんか、3年間あっという間だったなあ』
「ね。凄い早かった気がする」
私と菖蒲は進路がまた同じになった。同じにしようと言ったわけではなく、偶々目指した場所が2人とも偶然同じだった。私も菖蒲もそれぞれの目標のため大学に進学することを決めたのだ。私は将来お日さま園の管理者と、ヒロトさんの会社を継げるように経営や経済を学べる大学へ。菖蒲は秘書などの支える役目が向いていると分かったようで、同じく経営や経済を学べる大学へ。
「私からも、卒業おめでとう。今日はお日さま園でご馳走用意してるから皆いらっしゃい」
『えっそうなの⁉︎ありがとう、瑠璃さん!』
「今日はお祝いの日だもんね。でもその前に、サッカー部は試合かな?」
『あっそうだった。私、応援してくるね!』
「あ、ちょ、雪音!待ってよ!」
後ろから菖蒲が追いかけてくる。校庭には沢山の人が集まっていた。
「もう、いきなり駆け出して…」
『だって、楽しみだったから』
「そうだね」
菖蒲もなんだかんだ言って楽しみだったのだ。好きな人が活躍するところが。かく言う私も実はかなり楽しみにしているのだが。
「あ、来た!」
制服からユニフォームに着替えた選手たちが次々と出てくる。瞬間に校庭には歓声が鳴り響いた。これから空ヶ咲名物、サッカー部の卒業試合が始まるのだ。