第45章 Curse!〈栗花落 菖蒲〉
『ちょ、ちょっと雛菊さん!』
「あら貴方の身体、とっても綺麗ですね。白くて、柔らかい」
『そ、そんな事言わなくて大丈夫だからっ!』
「それに胸も私より…」
『ちょ、ちょっと!』
自分では揉みたくもないのに自分で形を確かめるように手で包み込んで揉んでいた。こんなに恥ずかしい事はない。
「冗談です。さて、着ましょうか」
それからは早かった。自分で着た事もないのに着物の着付けが異様に早く、テキパキと着付けられていく。
『わ、すごい綺麗…』
「生前、私が着ていたものです。貴方に差し上げます」
『い、良いの…?』
「ええ。貴方ならきっと似合うと思ったから」
髪には綺麗な飾りを付けて、化粧はしなかった。満足らしく、私の身体からにゅるっと出てきた。
「ほら見て、とても綺麗ですよ」
言われるがままに姿見を見ると、綺麗な私が写っていた。着物がとても素敵で気に入った。
『凄い…』
「素敵でしょう。貴方には貴方の魅力があるのです。とても素敵な魅力が」
『これ、私の大好きな人に見せたら、綺麗って言ってくれるかな?』
「ええ、きっと。言わなければ私が蹴り飛ばします」
『雛菊さん、割とアグレッシブだよね…』
泣き虫の旦那さんと相性が良かった理由が分かったような気がした。この人見かけによらず、結構強い。
『今日は、このままこれ着てもいいかな?』
「勿論。貴方に本当によく似合っています。貴方がきてくれてよかった」
蓮華とは違う、歳の近いお姉さんの様な感覚だった。本当に素敵な人だ、雛菊さんは。旦那さんの気持ちがよく分かる。
『さて、お掃除の続きしよう。雛菊さん、お話よろしくね』
「ええ。任せて下さい」
いつもなら家事は面倒臭かったが、今日は楽しかった。雛菊さんの話がとても暖かさで溢れていて、聞いている自分も楽しかった。恋をしているみたいに楽しかったのだ。
「今日はこんな所でいいでしょう。もう日も暮れますから、夕食の準備をなさっては?」
『うん。そうだね。と言ってもコンビニ弁当だから料理も何もないけど』
「そうなのですか?では居間へ行きましょうか」
『うん』
電気と水も一応今でも通っているから生活には困らない。お風呂は古典的で外から薪で沸かすもの。
『雛菊さんも、お風呂一緒にくる?』
「私で良ければ、お付き合いしますよ。背中を流す事はできませんが」