第5章 Startle!〈栗花落 菖蒲〉
「そっかぁ〜私も行こうかなぁ」
『姉さんは行っても分からないでしょ』
「確かに。私は友達と遊んでよ〜」
姉さんの凄いところは、コミュニケーション能力が異常に高いところ。新学期とかクラス替えになっても絶対に一人で居る事はない。片っ端から話しかけて輪を繋げていく。そういう所は素直に凄いと言える。
『明日は午前中部活で、午後の帰りは2時とか3時位になると思うから、お昼ご飯だけ作っておくよ?』
「うん、ありがと〜」
姉さんは朝に弱い。祝日は大体お昼近くに起きる。私も部活無い時はそうだけど、最近は部活のスケジュールが詰まってるから、昼近くまで寝てる事は無いかな。
『出来たよ、姉さん。ハンバーグ』
「わーい!」
すぐに手を付ける所を見ると、よっぽどお腹が空いていたのかも。
「やっぱり菖蒲のは美味しい〜」
『ありがと』
「私将来菖蒲が居れば何もいらなぁ〜い!」
『流石にそれはやだ』
大人になっても姉さんの専属シェフは嫌だな…。一人暮らししてみたい。
「はぁ…お腹一杯」
『あ〜なんか眠い』
そのままお風呂に入って寝てしまった。色々あって今日は疲れてしまったので、すぐに眠りにつくことができた。
ーー翌日
部活が終わって、学校の食堂でお弁当を食べた。食堂は土日は勿論閉じているが、部活動がある生徒のために、昼食を食べる場として解放している。その後、少し足取りは重いまま病院へ向かった。
「あら、菖蒲ちゃん」
『あっ…』
「太陽のお見舞いに来てくれたのね。太陽は凄く元気よ。良かったら話をしてあげて」
『あ、はい。ありがとうございます』
太陽のお母さんに言われるがままに病室へ向かった。思えば、今までお母さん達と出くわしたことなかったな。いつも来る時間帯がズレてたのかな。
コンコンコン
小さくノックをすると、中からはい、という声が聞こえた。間違いなく太陽の声だ。昨日の今日でもう目が覚めたんだ。
『…』
そのまま静かにスライドドアを開けて中に入った。昨日あんなに全力でサッカーしてたのに、もうピンピンしてる。案外回復力はあるのかも。
「菖蒲…」
『…した…』
「え?」
『心配したんだから!バカ!』
病み上がりの病人に説教するのも気が引けたけど、でも…本当に太陽まで居なくなってたら、今度こそ私が消えてなくなってた。
「菖蒲…ごめん」
『ふっ…うぅ…』