第44章 Memory!〈遠坂 雪音〉
〈翌日〉
『長かったけど、今日でもうライオコット島とはおさらばか…』
「そうだな。気候は文句なしに最高だったから惜しいな」
『まぁ、君達はサッカーができればそれで良いんだろうけどさ。早く飛行機乗ろうよ。もうそろそろ出発だって鬼道コーチが』
「行くか」
『うん』
遂に今日はライオコット島から日本へ向かう日。天馬たちは各国の代表とお別れの挨拶していて、マネージャーの私は手持ち無沙汰だ。
『お別れの挨拶、長くなりそうだね』
「思い入れがあるんだろう」
『京介はないの?』
「挨拶は済ませてきた」
『そっか』
私達は割と初めの方に乗り込んだらしく、席はまだ空いている。
『京介、窓際に乗る?』
「いや、大丈夫だむしろお前のほうが乗り物酔いするだろう」
『仰る通りで…』
京介からの圧を受けて窓際に乗り込んだ。もう大分ライオコット島の環境に慣れてしまって、色々あったけどそれが名残惜しく感じる。
『菖蒲は元気かな。1人で戻るって言ってたけど、何もないと良いけど』
「大丈夫だろう。あいつは1人でも十分やっていけそうだ」
『それがそうでもないんだよ。菖蒲って本当に何も相談してくれないの。何回も言ってるのに全然改善する気配がないし。だから側に雨宮君が必要なんだよ』
「なるべくしてなった関係だな」
『そうだね〜。雨宮君には手綱を握ってくれる存在が必要だし、菖蒲には強引に引っ張ってくれる存在が必要。私はあの2人本当にお似合いだと思うんだ。菖蒲の幸せそうな姿を見れるだけで私は嬉しい。小さい頃からずっと一緒にいたから分かるんだ。雨宮君と一緒にいられて本当に楽しそう』
「…そうか」
凄いニヤニヤしながらこっちを見てくる。微笑ましいと言わんばかりに。
『な、なに』
「別に、なんでもない」
『ニヤニヤしちゃって。恥ずかしいからやめて』
「に、ニヤニヤ…⁉︎してないぞ」
『説得力皆無。あ、天馬達乗ってきたよ』
お別れの挨拶組がこぞって乗り込んできた。ようやく終わったのだろう。
「全員乗り終わったな」
『じゃあもうそろそろ出発かな』
組んでいた足を一旦崩して両足を床に付けた。まもなく離陸する。
『私が目覚めなかったら、名前を呼んでね』
「…分かった」
『一回じゃ間違いだと思って起きないかもしれないから何回も呼んでね』
「ああ」
『しつこいくらい呼んでね』
「分かった分かった」