第43章 Sightseeing!〈遠坂 雪音〉
『取り敢えず一回頼んでみようか』
「ああ」
取り敢えず紅茶には詳しくないけど、聞いた事がある種類のものと一緒に頼んでみた。
「見た感じはパウンドケーキに似てるな」
『そうだね。ちょっともったりしてるから渋めの紅茶に合いそう』
「お前の紅茶、あまり渋みがないストレートだろ。交換しないか」
『いいの?』
「口付けてないから構わない」
別にそういうことを心配してるわけじゃないけど、確かに色んな紅茶を味わってみたかった。けど、既に私は自分の紅茶に口を付けてしまっている。
『あの、私一口飲んじゃったよ』
「構わない」
『え、あ』
そのまま気にするでもなく片方の腕をテーブルに乗せながら目を閉じてゆっくりと紅茶を飲んでいる姿に目を離す事ができなかった。
「どうかしたか?」
少し笑いながらそう問われてしまった。
『な、なんにもない!』
慌てて目を逸らして焼き菓子を口に放り込み、まだ少し暖かい渋めの紅茶を流し込んだ。まだ口付けすらした事もないのに、気にするでもなく間接キスをするのかとしみじみ思った。それとも気付いていないのか。
『こ、これ美味しいし、瑪瑙さんと優一さんにお土産に持って帰ろう』
「ああ」
自分だけ意識している状況が少し恥ずかしくなって、急いで間接キスという単語を頭の中から消し去ろうと努力した。
『よ、よし。体力も回復したし、このお菓子買えるところに行こう』
「そうだな」
『あ、お支払いはちゃんと分けるからね』
「…分かった」
こういう事は大事だ。奢ってもらう方が美味しく食べれないので、自分のお金で美味しく食べたい。
『美味しかったね』
「ああ」
『さっきの焼き菓子だけど、空港のお土産コーナーだったら売ってるんじゃない?行ってみようよ』
「歩くと遠いから、バスに乗るぞ」
『うん』
近くのバス停から乗車し、終点の空港までバスに揺られた。バスに乗っている途中でちょくちょく他の国の選手や勿論イナズマジャパンのメンバーにも会った。冷やかされたりもしたけど、別に冷やかされたところで別れようと思えるような柔な関係でも無かったので、笑顔で受け流してやる。
『空港に着きそうだよ』
「降りるぞ」
『はーい』
空港に入ると入り口にはさまざまな店が並んでいて、一瞬ショッピングモールなんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。
『これじゃないかな⁉︎』