第43章 Sightseeing!〈遠坂 雪音〉
「お前だって大概だろ」
自分では全く自覚がないが、私の顔も赤いらしい。
『暑いからかもね』
そう言って誤魔化した。断じて、自分も好きだと改めて思ったとかそんなことはない。
『そういえば、雨宮君見かけないね。結構いろんな人ちらちら見かけるけど』
「どうせ天馬あたりとサッカーでもしてるんじゃないのか」
『そうだったら良いけど…雨宮君、また菖蒲が突っ走ろうとしてるの気付いてると思うんだよね』
「まぁ、そうだろうな」
『歯痒いだろうな。私だって何も協力できなくて悔しいんだから』
今は少しだけ雨宮君のことが心配だ。菖蒲と連絡とれるなら良いけど、菖蒲のことだから連絡断とうと思ってるんじゃないかって邪推してしまう。
「本人たちに任せるしかないだろ。俺たちにどうにかできるわけでもない」
『でも』
「栗花落はお前と雨宮を巻き込みたくないから一人で行ったんだろ。それをお前がいちいち気にしてたらそれこそ栗花落も報われない」
京介に言われて、初めて気が付いた。菖蒲のことを、自分が過剰に心配しすぎていることに。菖蒲を信じているつもりだったけど、心の底では信じ切れてなかったんだ。
「それに、今は他人のことよりも自分の事じゃないのか」
『おっしゃる通りで』
「大事な人のことを心配する気持ちもわかるが今は自分のことを一番に考えてくれ」
『分かってる』
自分のためというより、京介のためだ。ここで私が無理したら、困るのは私もそうだけど同じように京介も困るらしい。だから私は彼のために生きたいのだ。
『京介を裏切りたくはないからね』
「もっと言い方あるだろ…」
『裏切るって言い方もちょっと違うかな。とにかく何とかなるよ。天馬だっていつも言ってるし』
「ああ」
話すだけ話して結局何も頼んでない迷惑客になっていることを思い出し、徐にメニューを取り出した。
『折角来たから何か頼もうよ。お昼には早いからおやつだと思って』
「そうだな」
予算には余裕があるし、ここでお茶したとしてもお土産代には困らないだろう。
『ねえ、これなんだろうね。聞いたことないけど』
「この島伝統の焼き菓子って書いてあるぞ」
『いやまさしく探してたものじゃん』
二人して驚いた顔で目を合わせた。
『これお持ち帰りとかできないかな⁉』
「この店ではテイクアウトはやってないみたいだぞ」