第43章 Sightseeing!〈遠坂 雪音〉
すると店主は後ろを向いてなにやらゴソゴソと探り始めた。
「こちらの茶葉は全部このライオコット島限定のフレーバーなのです。ですが実はこの島でも珍しい茶葉があるのです。多くの量を売ることはできませんがお試し用の袋に入れてご用意しますね」
『ありがとうございます。ではこれとこれを』
「ありがとうございます。包みますから少々お待ちくださいね」
私も紅茶については詳しくないので、瑪瑙さんの好きそうなものを予測するしかなかったが、まさか珍しい紅茶を譲っていただけるとは嬉しい誤算だ。
『これで瑪瑙さんのお土産は決まったね』
「ああ」
『次は優一さんだけど…優一さんは何が好きかな』
正直優一さんとはあまり関わりがないから分からない。話したことがあるのも両手で足りるほどだし。
「兄さんは…そうだな…」
と言いつつなかなか出てこない様子。京介が何か掴めないと、私も難しい。
『ねえ、思ったんだけど』
「なんだ?」
『この紅茶に合うお菓子とかどう?』
「…それにしよう」
どうやら京介は行き詰っていたらしい。紅茶とお菓子なら無難で、ティータイムが好きなあの人たちに喜んでもらえるだろう。
『この島で有名なお菓子なら他と被らないし良いんじゃない?』
「行ってみるか」
『よし、行こ』
市場を抜けて次はショッピングができる通りへ。服も売ってるけど、今は足りてるし良いかな。
『お菓子ってどこに売ってるんだろ。ぱっと見じゃわかんないな…』
通りをうろうろするのも悪くないけど、大分疲れてきた。市場を往復して大分歩いたからかとりあえず一息つきたい。先にお土産買ってからの方が区切り的に丁度いいしもうちょっと頑張ろうかな。
『えっと、お菓子のお店…』
「無理するな。一旦落ち着ける店に入るぞ」
『…ありがと』
見てないようでちゃんと見てる人だ。私が疲れていることも見ただけで分かってしまう。何も言ってないのに。
「ここでいいか」
『うん』
テーブル席に向かい合って座った。開店してしばらく経っているからか、そこそこお客さんがいて賑わっている。
『なんでわかったの?』
「疲れてると歩くスピード遅くなるだろ」
『よく見てるなあ』
「見ないわけないだろ」
そんな堂々と言われるとこっちだって照れてしまう。目の前の男も顔を真っ赤にして逸らしているが。
『真っ赤になっちゃってまぁ』