第43章 Sightseeing!〈遠坂 雪音〉
別に品物の中に赤いリボンがあった訳じゃないけど、大阪で二人で見て回ったことがとても懐かしい。
『リボン貰った時、凄く嬉しかったよ。新幹線の時間もあって急いでたのに、わざわざ買って付けてくれたし』
あの後、僅かな間しかリボンを付けていられなくて今となってはもったいないなと思っている。事故の時に付いた汚れも瑠璃さんに綺麗にしてもらって学校に良く付けて登校してる。
「大阪なんて滅多に行かないだろ」
大阪じゃなくても売ってそうだけど、というメタな発言はしない。リボンも嬉しいけど、大阪でリボンを買ってもらった思い出が何より嬉しい。
『そうだね』
あんまり素直に言っても良くないと思って言葉を飲み込んだ。言っていいことと言わない方が良いことがあるのはいくら私でもちゃんとわかってる。
『京介、そういえば優一さんになにかお土産買っていかないの?』
「兄さんにか…」
『そうだよ。優一さんの好きそうなもの何か知らないの?』
自分たちだけ楽しむのも気が引けたのと、自分で作ったはずのむずがゆい雰囲気を壊したかった。
「兄さんの好きなものか…」
『私は瑪瑙さんにお土産買っていこうかな。瑪瑙さん、紅茶集めるのが趣味みたいだから』
「紅茶を選び終わったら手伝ってくれないか」
『良いよ。一緒に優一さんのお土産選ぼう。その代わり、紅茶も一緒にね』
「ああ」
折角市場に来たから先に紅茶を選ぶことにした。端まで来たところを引き返して少し収まりつつある活気の中を進む。
『さっき茶葉売ってるお店あったよね。そこまで戻ろう』
「ああ。さっきよりは混雑していないが、離れるなよ」
『うん』
なるべく京介から離れないようにしながら、茶葉を売っている店まで戻ってきた。人も少なくなってきたからか、楽に戻ってこれたように思う。
『どうせならここでしか売ってないものが良いよね。瑪瑙さんが持ってなさそうなのはどれだろう』
「悪いが俺も紅茶には詳しくない」
『それは知ってる』
どうしたものかな、店の前で悩んでいると、店主と思しき人が声をかけてくれた。
「何かお探しですか?」
『お土産用の茶葉を探しているんです。紅茶が好きな人へ買っていこうと思って』
「ならおすすめはこのあたりですね」
『この中で特におすすめはありますか?できればこの地域でしか買えないものが良いのですが』
「少々お待ちくださいね」