第43章 Sightseeing!〈遠坂 雪音〉
優一さんがそうだったせいもあってか、身の回りの人の健康に関しては敏感なようだ。
『今日はそういうのは忘れて沢山楽しもうよ。こんな機会なんてそうないんだし。それに楽しんだもの勝ちでしょ、こういうのは』
「そうだな」
肩の荷が下りたのか、ふわっと笑った。君はそんな風に心から笑ってた方が格好いいよ。言わないけど。
『まずはどこ行こうかな。朝ごはん食べたばかりだし、食べ物はちょっと遠慮したいよね』
「太るからか?」
『デリカシーの欠片もない返答するんじゃないよ』
偶にこういうこと言うけど、これは果たして狙ってボケているのか、はたまた天然発言なのかが分からない。口数はそう多くないタイプだから余計分かりにくいのだ。
『そうだなあ。ライオコット島の観光スポットあたり行ってみようか。街中回ってみようよ』
「ああ」
午前中だというのにものすごい活気だ。市場は大盛り上がりで、新鮮な野菜やフルーツ、魚や肉まで色んなものが揃っている。
『私、午前中にあんまり外に出なかったから新鮮だな。こういうの』
「そうなのか?」
『朝弱いんだよね。昼近くまで寝てたいタイプ』
「想像するに難くないな」
『だから土曜に学校の行事とかあると嫌になっちゃう。寝かせてほしいんだよね。でもそっちは部活か』
「そうだな。ほぼ毎日朝早起きだ」
部活は一応家庭科部に入ってはいるけれど、土日の活動はない。大体は裁縫で作品を作っているが、偶にお菓子を作ったりする。私は最近は学校のバザーに出すためのティッシュケース作りに勤しんでいた。
『もう習慣だから起きるのが辛くない、ってことか』
「そうだな。もう慣れた」
『青春だねえ。大切にしたまえよ』
「誰目線なんだお前は…」
部活で青春出来なくても、こうやって京介や菖蒲たちと休み時間に話したり、帰りに寄り道したりするだけで十分青春してると思う。元々スポーツはそこまで好きじゃなかったから運動部に憧れてはいない。
『でも、私も家庭科部でそれなりに楽しくやってるから、いいんだ。小さい頃にあまりできなかったことできてる気がして嬉しいし』
「良かったな」
『うん』
それぞれの話をしながら活気にあふれた市場を通り抜けていく。もうすぐ市場の端に付くというところで、装飾品のお店を見つけた。
『ねえ、ここ見てこうよ』
「なんだ」
『私が中学生の頃に貰ったリボン、思い出して』