第5章 Startle!〈栗花落 菖蒲〉
『駄目…太陽…!』
そのままウォーミングアップを初めてしまった。駄目だよ、そんな事したら…太陽の身体が…。
「十年に一度の天才ってもしかしてあの子かな?ほら、あの遅れてきた子…」
十年に一度の天才…?もしかして…太陽がそうなの…?いやでも、太陽はずっと入院していたんだ。そんな筈がない。
「さぁ!雷門中対新雲学園!まもなく試合スタートです!」
どうしよう。止めるべきだったのかな…。でも、太陽は何処となく悔いは無いように見える。試合が始まって、太陽は初めから全力だった。もう後が無いという事を分かっての事なんだと思う。
「太陽神アポロ!」
もう相当身体はボロボロの筈なのに。どうしてそこまで動けるの。
「雷門押されているー!」
私も一応サッカーに関わっているから、フィフスセクターという組織のことは知っている。帝国はフィフスに従っている様に見せかけて、実際はレジスタンスというらしい。雷門は無論レジスタンス。ならば新雲は…フィフスだ。
『太陽は…それで良かったの…?』
でも、突然だった。太陽が化身ドローイングで化身を出す。けれど雷門は三人の化身を合体して対抗してきた。三人の力で見事点をもぎ取った雷門。その後も快進撃は止まらず、雷門が次の試合への切符を掴んだ。
『太陽!』
急いで観客席から乗り出す。雷門の子が運んでくれたお陰もあって、すぐに病院に運ばれる事になった。私も急いで病院に向かった。言いたい事、一杯あるし…。
「栗花落…?」
『…⁉︎』
「どうしたんだ?そんなに血相変えて」
『ごめん、雅野君!今…急いでるから!』
そのままホーリーライナーに飛び乗って、アマノミカドスタジアム前に戻ってきた。そこから走って病院まで来た。体力に自信無かったから、正直もう息が切れている。
『す、すみません…!雨宮 太陽君は…!』
「今は緊急手術中です。此方へ」
看護師さんに案内されて、手術室の前にやってきた。恐らく太陽のお父さんとお母さんだと思われる人が心配そうに座っていた。
『太陽…!』
「あら…太陽のお友達…?」
心配で死にそうな顔をしていた。自分の子供だ。しかもこんなに全力で試合したんだ。本当はきっと凄く心配だったんだろう。
『は、はい…』
「そう…もしかして…菖蒲ちゃんかしら」
『はい』
「お見舞いに来る度に貴方の事を話していたから…」