第38章 HLHI Ⅳ〈遠坂 雪音〉
彼は、京介は私が言ったことなら信じるだろう。けれど、余計な事は考えてほしくないのだ。
「またか…」
『何かあったんですか、鬼道コーチ』
「イギリスから招待状が届いている」
『招待状?』
「毎年恒例なんだ。普通のパーティーだが、小手調べのような事をする」
『へぇ…』
毎年恒例とはよくやるものだ。高校生でパーティだなんて、って思ったけど円堂監督達は中学生の時点でパーティーデビューしていたのかと思うと、流石に凄すぎて声が出ない。
「選手、マネージャー共に衣装の準備をしろ。ドレスコードがあるからな」
いやドレスって言ったってそんなもん持ってきてませんけど…。
「雪音、こっちだってさ」
『え。ドレスあるの?ここに?』
「みたいだよ」
どでかいウォークインクローゼットの扉を開けると、とんでもない数のドレスがラックにかかっている。いや、マネージャー2人しかいませんけど。
『あれ?』
「どうかした?」
『これ…文化祭で着たやつだ』
「うわ偶然。それ着たら?」
『…うん』
ラックからそれを取って、合わせてみた。丈も丁度よくて着られそうだ。
『菖蒲のドレスはどうする?』
「取り敢えず雪音先に着替えてきなよ。私はもう少しちゃんと見る」
『はーい』
ドレスを持って試着室へ。あとはサイズが合いそうなストラップレスのブラを引っ掴んだ。何をとは言わないが寄せられるだけ寄せて、あとは着るだけ。後ろの編み上げは菖蒲にやって貰えばいいし。
『菖蒲〜決まった?』
「びっくりした…全然決まんない。どうしよう…」
『あらま。じゃあ私も手伝おうか。色から絞っていこう。どんな色がいい?』
「色か…」
『菖蒲なら、瞳とか髪の色が暗い色だから暖色にすると浮くと思うんだけど、髪の色に合わせて緑でもいいんじゃない?』
「そうだね、それなら…やっぱりこれかな」
菖蒲の衣装も決まった事で、編み上げをお願いする事にした。
「似合ってるよ。雪音」
『ありがと。靴はこれだとシルバーかな』
「すぐ決まるの、凄いね」
『北大路で慣れたよ。こういうの、嫌というほど行かされたから』
正直言うとパーティーはあんまり好きじゃない。疲れるし、愛想笑いでニコニコしなきゃいけない。挙句の果てには上から下まで舐めるように見られて。もう嫌になってしまった。
「そっか」
『まぁ、こういうのは得意だから任せて』