第37章 HLHI Ⅲ〈栗花落 菖蒲〉
『分かりました。今日はお言葉に甘えて準備させてもらいますね』
「ええ。また泊まりに来てくれた時にお願いするわ」
『はぇっ⁉︎はいっ!』
「あらあら、照れちゃって」
なんか私雨宮家に遊ばれてない…?気のせい…?
『し、失礼します!』
どんな顔をしたら良いか分からなくて階段を駆け上がり太陽の部屋に逃げた。扉を開けたら丁度太陽が着替えていて、そういえばノックをしてないと思い出し余計に混乱してしまう。
『うひゃあああ!』
「菖蒲のえっち」
『ちっちが、違うから!』
またバタンと扉を閉めて、ドアの前にへたり込んだ。海の時に見てはいたけど、やっぱり男の子で、筋肉が付いている身体だった。
「菖蒲!入って良いよ!」
『はい…』
なんかもう朝から疲れてしまった。いくら混乱してたからって着替えを覗いてしまうだなんて。
「ドキドキした?」
『しない訳ない…じゃんか』
「あ〜!菖蒲可愛い〜!」
朝っぱらからぎゅうぎゅうと抱きつかれて、慌てて引っぺがした。それどころではない。
「ぶ〜!あ、そうだ。昨日蓮華ちゃんから荷物預かってきたよ。とりあえず着替えだって!」
『助かる。あ…』
「何?」
『い、今太陽の下着、履いて…!』
「ふーん…?」
太陽の手が太ももを伝って段々と上へ上がってくる。
『なっ!なっ…にして…ふっ…』
「パジャマと言い、下着と言い、僕の付けてるんだ〜へぇ〜」
『な、何?』
「ブラジャーは?」
『し、してないよ…洗濯機に入れちゃったもん…』
そう言うと太陽が私のお尻に手を触れたまま固まった。
「ブラジャー…してない…?」
『だからそう言ったでしょ…』
「あ」
『あ?』
「菖蒲のえっ…!もごもご…」
『ば、バカ!声でかいでしょうが!』
慌てて両手で太陽の口を塞いだ。こんな事大声で言われてたまるか。
『着替えるから外行ってて!』
「はい…」
今の時間はなんだったんだと思いつつ急いで蓮華に渡された自分の服を着た。下着類もしっかり入っていて嬉しい。太陽の下着も脱いで自分の下着に履き替える。蓮華の今日のイチオシコーデはスウェットにプリーツスカート。そして私が好きなタイツ。上着は元々着ていたカーディガンを羽織れば良い。ナイスコーディネートだ。
『太陽、いいよ』
「はーい」
ちゃんと扉の前で待っていたらしい太陽が勢いよく部屋に飛び込んできた。