第37章 HLHI Ⅲ〈栗花落 菖蒲〉
朝、目が覚めると背中がじんわり温かい。
『よいしょっと…』
くるりと一回転すると、目の前ですやすやと太陽が眠っている。ベッド横に充電していたスマホを見ると、朝八時だった。太陽の手をどかしてベッドから這い出る。
「うぅ~菖蒲~?」
『太陽。おはよう。もう朝だよ』
「ふぁ~」
『朝ごはん食べて早く合宿所に行かなきゃ。私の荷物も取りに行かなきゃいけないし』
「は~い」
まだ寝ぼけているのだろう。間の抜けた返事しか返ってこない。とりあえず朝食をどうするか聞いてこようと思って階段を降りた。
『おはようございます』
「おはよう、菖蒲ちゃん。太陽は起きたかしら?」
『起こしはしたんですけど、まだちょっと寝ぼけてるみたいです』
「あら、ひっぱたいてよかったのに…な~んてね。冗談よ。朝ごはん今から作ろうと思ってたんだけど、食べる?」
『あ、はいぜひ!太陽もう一回起こしてきますね』
「は~い」
また階段を駆け上がって太陽の部屋へ。上半身だけ起きているけどまだ寝ている。朝が弱いらしい。
『太陽!』
「うわぁっ!」
『おはよう。昨日はよく眠れた?』
「う~ん、菖蒲がそれ聞く~?」
『まぁ、とにかく朝食だって。一緒に食べようよ』
「うん」
目をこすりながらのそのそと起き上がり、一緒に階下へ。目玉焼きの美味しそうな匂いがキッチンに漂っていた。
「おはよう、太陽」
「おはよ~」
「おはよう。そこにいるのは菖蒲ちゃんだね」
『あ、はい。おはようございます。お世話になっちゃって…えっと、ありがとうございます』
「いえいえ。大変だったね。今日からHLHIで大変だろうけど頑張ってくるんだぞ、二人とも」
「うん!」
『はい』
サッカーの話になると急に起きるのはいったいどういう事なんだろう。サッカーに反応するアンテナでもあるのかな?
「はい。ご飯できたわよ」
「いただきまーす!」
『いただきます』
「いただきます」
みんなでそれぞれ朝食を食べていき、私ももぐもぐと頬張っていく。
「ごちそうさま~!」
驚異の速さで掻きこんでいく太陽を尻目に、私はいつものスピードでパクパクと食べていく。
『ご馳走様でした。お皿洗いますね』
「あらありがとう。でも大丈夫よ。今日は忙しんでしょう?私に任せて準備を頑張って」
昨日できなかったら代わりにと思ったが太陽のお母さんが優しすぎる。