第4章 Prop!〈遠坂 雪音〉
「ねぇ、名前は?」
『遠坂 雪音です。サッカーの練習ですか?』
「うん、そう。あ、私は空野 葵。宜しくね」
『はい、宜しくお願いします!』
「あ、これ食べて良いよ。余りで悪いんだけど」
『いえ、食べられるだけありがたいです!』
おにぎりを一つ食べてみると、塩味でとても懐かしい気分になった。
『おいしい…!』
「良かった。ねぇ、練習見に来ない?サッカー好きなんだよね」
『あ、はい…!』
おにぎりをもう一つ食べて食事を終えた。何処かのお店で食べる予定だったけど、此処でおいしいご飯が食べる事ができて良かった。
「それじゃあ、行こっか」
『は、はい!』
河川敷駅を抜けて西に真っ直ぐ行くと、大きな学校が見えてきた。
『凄いですね…』
「私立だからね」
「遅いぞ!天馬!…ん?その子は誰だ?」
「雪音…?」
『あ、狩屋君じゃないですか!お久しぶりです』
「お久しぶりです!じゃねーよ!何処行ってたんだよ!」
狩屋君が心配そうに駆け寄ってきた。まぁそうだろう。かれこれ2、3ヶ月は帰ってきていない。
「…?」
「ヒロトさん達だって凄く心配して…!」
『まだ…戻る訳にはいかないので…』
「は…?」
「遠坂…?」
『あ、剣城君も、お久しぶりですね!』
「おい!人の話を…!」
「狩屋も知ってるのか?」
「まぁ、同じお日さま園にいたし…」
「おい、お前達!何してるんだ!」
前方から知らない人の声が聞こえてきた。
「監督」
「見学か?」
『あ、はい…』
「遠坂、どうして此処にいる」
『今日は偶々外出許可を貰いました。と言っても5時までには戻らなくてはいけませんが…』
「ならどうして…家に戻らないんだ」
『戻ったら…全てが無駄になります。私は…まだ出る訳には行きません』
「円堂、そんな所で何をして…」
『鬼道…総帥…?』
間違いない。帝国の鬼道総帥だ。どうして雷門に…。
「帝国の生徒か?」
『この春に…帝国学園に通う予定だった…遠坂 雪音です』
「なっ…!遠坂 雪音…だと…?行方不明のか…?」
「ゆ、行方不明⁉︎」
『はい。ずっと…フィフスセクターに監禁に等しい状態でしたが…漸く外出許可を頂けました』
「なら、早く通報を…!」
『いえ、その必要はありません。この革命が終われば、私も解放されます。それまでの辛抱なので…』
「…?」
『でも、皆さんに力を貸す事は出来ます』