第4章 Prop!〈遠坂 雪音〉
『すみません…千宮路さん』
「なにかね」
『少し、出かけてみても良いですか?』
「…」
『5時迄には帰ってきます…!だから、今日だけ、許してもらえませんか…』
「分かった。良いだろう」
『ありがとう…ございます…』
きっと、何も監視をつけないという事は…信用されている。このまま帰れば、きっとまた連れ去られる。此処まで掴み取った信用を無碍にする訳にはいかない。今日は…家に帰らない。菖蒲ちゃんの所にも…行かない。
「これを着て行くと良い」
貰ったのは、出かけるに足りる私服だった。確かに、此処にきてから、一度も外には出ていない。ずっと、部屋の窓から空を見上げていただけで。
『はい』
部屋に戻って、渡された私服に着替えた。普通の、私と同じくらいの子が着ていそうな…。
「後はこれを」
『…?』
千宮路さんが入り口に立っていて、ある物を貰った。それはバッグとお小遣い。なんだかお日さま園を思い出す。
『ふふっ…』
「君の笑顔は、初めて見たな」
『だって…お父さんみたいでしたから』
「…!は、早く行け」
『はい』
そのままフィフスセクターを後にした。まずはお昼ご飯を食べる場所を決めるのが妥当だと言えるだろう。今日は確か…土曜日。何処が良いかな。
『うわぁ…外は久し振り…!』
久し振りの外出。新鮮な空気をたっぷりと吸った。今日は確か土曜日。色んな所に行きたいけど、混んでいるんだろうなぁ。そう思って河川敷を歩いていた時のことだった。
「天馬!そっち行ったよ!」
「うわぁぁああ!」
あ、サッカーやってる。楽しそうだなぁ。良いなぁ、私も自由にサッカーやりたい。ちょっと見て行く位良いよね。
「信介!凄いよ!」
「やったあ!」
『うわぁ…!』
なんだか、私もやりたくなってきちゃった。二人がとても楽しそうだったから。
「ねぇ君!サッカー好きなの?」
『へっ…私…ですか?』
「うん!」
『はい、好きですよ』
「じゃあ、一緒にやろうよ!サッカー!」
『へ…?』
「ちょうどこの後、雷門中で練習があるんだ!一緒に行こうよ!」
『え、で、でも…ご飯が…』
「あ、ご飯なら…葵〜!」
「何〜?」
「さっきの余り、この子にあげても良いかな〜?」
「良いよ!」
声のした方見ると、私と同い年位の女の子がシートの上に座っている。
「こっちよ」
『あ、ありがとうございます』